表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/76

55 公爵夫人の私と、離婚宣言

 今日で勲章授与の凱旋コンサートは終わった。国中を回る3カ月に渡る長いコンサートツアーだったので、今日から2カ月の休み。それが終わると国外のツアーが始まるが2カ月あれば、気持ちを立て直せるだろう。




「クリス様、離婚して下さい」


 クリス様はブランデーを飲みながら、着替えをしているところで、それを噴き出した。


「え? え? どうして? また私、何かやってしまいましたか?」


 わたわたとドアにたたずむ私に近づき、目を合わせてきた。

 その眉毛はやはり垂れ下がっている。


「その顔」


「え?」


「いつもその悲しい顔で、私を見てる」


 はっとしてクリスは両手で顔を引き上げる。


「そんな顔してますか?」


「えぇ。私はクリス様に、そんな顔をさせたくありません。もう充分償って頂きました。私といれば罪悪感から逃れられないでしょう。どうか私と離婚して、これからの人生は幸せになって欲しいのです」


「この顔は……悲しいわけじゃないんです!」


 そう言いながら、クリス様は視線を私から外す。


「いや、悲しいのかな……」


 大きなため息を吐いたあと、その両手で今度は私の顔を包み込む。


「だって、貴女は私に笑いかけてくださらないから」


「え!?」


「シャーロットやアーサーには笑顔を見せるのに、私には笑って下さらない」


「え? え?」


 私には全く自覚がない。


「私、貴方に笑ってませんか?」


「はい」


「えっと……それは私の表情筋の問題で……」


 笑うことが許されなかった私の少女時代、今も私は引きずってたの?

 でも……


「クリス様も私には敬語です」


 子どもたちには親し気に話すのに。


「貴女だっていつまでも『クリス様』呼びです。私はオーリーって愛称で呼んでるのに」


「……」


 口では勝てない! ずるい!


「はははっ! 口がひん曲がってますよ」


 ひん曲がってるなんてひどい! 私はいつも貴方に綺麗だと言われたいのに!


「オーリー。オーリー」

 クリス様が笑いながら、その大きな身体で私を抱きしめる。


「オーリーは私を愛してますか? プロポーズの時は愛が分からないって言ってましたけど、今は分かりますか?」


「クリスさ……クリスのことは好き」


「オレもオーリーが好き。オレはオーリーといれば幸せ」


「クリスが幸せなら、私も幸せ」


「オレはオーリーを幸せにして、笑顔にさせたかっただけなんだ。だからいつか必ずオーリーを笑わせてみせるから、ずーっと側にいて」


 今すぐ何とか笑ってみせたいけど、私が笑わなければ、クリスはずっと側にいてくれるってことよね? 


 だったら私、死ぬまで笑わないわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ