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54 そして……公爵夫人になった私と、夫と娘

 私のコンサートのスケジュールの関係で結婚は1年後に執り行われた。

 クリス様は事業に忙しく、私も音楽家として多忙な日々を送っている。


 結婚してすぐ長女シャーロットを身ごもり、その4年後には長男アーサーが生まれた。


 長男を妊娠中に、芸術に貢献したとして、私は陛下から勲章を授与された。


 出産後落ち着いた今、勲章授与の凱旋コンサートとして全国を回っている。

 そして、今日は王都での最終日、その楽屋にクリス様とシャーロットがやってきてくれたのだ。


 クリス様から一輪の紫の薔薇を渡される。

 私のデビューコンサートで贈られた大きな薔薇の花束を足に落として、ねん挫をして以来、希少な花を一輪だけ贈ってくれるようになった。


「この薄紫のドレスを着たお母さまって、まるで絵本に出て来る妖精みたい。はぁ~私もお母さまみたいに銀髪で紫の瞳が良かった!」


 私はこんなどこにいるか分からないような、かげろうのような色合いの髪や瞳が嫌いだった。シャーロットの白い肌は私譲りだが、黒髪とびっしりと生えた黒いまつ毛に縁どられた意志の強い瞳はクリス様にそっくりで、頭の回転の早さと口の達者さも彼譲りだ。


「お父さまは男の人だからその色でもかっこいいの! 私はかっこいいより可愛いがいいの!……それなのにアーサーはお母さまと同じ銀髪なんてずるいわ」


 ぷんぷんと音がでそうな位不機嫌な娘を、口下手な私はどうやって機嫌を取ろうかと、長身の夫を見上げる。

 すると夫はいつものように眉毛を下げ、困ったように私を見つめる。


 夫はいつもこんな表情で私を見る。


 彼は私に不機嫌な仕草をしたこともないし、声を荒げたこともない。いつも私の機嫌を伺い、申し訳なさそうに私を見つめる。

 彼はまだ、私への罪悪感に苦しんでいるんだろうか。


 私が言った初めての我が侭「クリス様の顔が見たい、声が聴きたい」という言葉を守るため、加害者の彼は我慢して、付き合ってくれているだけなのでは、ないのだろうか。



 やっぱり慣れない我が侭なんて、言うんじゃなかった!



 私を妻に迎えてくれ、何不自由ない暮らしを与えてくれ、二人の子どもにも恵まれたし、ピアニストとして成功させてくれた。

 もう彼の贖罪は充分果たされたと思う。

 だからもう彼を解放してあげたい。



 罪悪感にまみれた愛など、私はいらないし、その愛は私を傷つける。


 だからこの負い目だらけの結婚を解消して、お互い幸せになる道を探した方がいいのではないかと思う。


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