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47 ハワード子爵令息、クリスの過去⑥

 ブラクトンホール用の曲を決め、編曲をする。

 ほとんどが新曲、しかも難曲でプログラムを組む。


 オリヴィア様は難なく演奏をするが、ハリーはなかなか練習が進まない。

 そりゃそうだ、バカンスでなまくらになったその指は、ろくに動きやしない。

 当たり前だが、各段に腕が落ちた。


「今までと同じ曲でいいじゃないか!」とハリーは言うが、

「ブラクトンホールですよ? 耳の肥えた方が観客におられるのです。そんな訳にはいきません」とたたみかけてやる。


 億劫になったのか、さらに練習をさぼりがちになる。


「そこまで練習がお嫌なら、仕方ないですね……ピアノパートを増やして、楽になるようにしましょうか? もう時間がありません! ハリー様はサビの部分だけも、何とか弾けるようにして下さい」


 そう言うと大喜びをし、何とか体裁を保つ程度には演奏できるようになった。




 さぁ、本番だ。

 耳の肥えた観客は、サビの部分だけを酔ったように奏でるバイオリニストに、どんな評価を下すだろう。

 王侯貴族が観ている前で、思いっきり恥をかくといい!




 しかし残念ながら翌日出た新聞記事は、公爵家に配慮したのか、ハリーを叩かずに無視することにしたようだ。

 だが社交界ではすでに『ナルシストなヘボバイオリニスト』として噂が広まっている。

 ハリーはまだ知らないようだが……次の夜会が楽しみだ。


「私のことが何も載っていないじゃないか! お前、騙しやがったな!」


 新聞記事を前に、ハリーは顔を真っ赤にして怒鳴りつけてきた。

 ははは、ブラクトンホールで演奏できるほどの実力が、お前にあると本当に思っていたのか?


「バイオリンの巨匠ラムダに、キングストンオーケストラ、『レコード』への録音依頼に、隣国からのコンサート依頼、王女様のサロンへの誘いだと!?」


 一流どころからのオリヴィア様へのオファーに、ヤツは身体を震わせる。


 思い知ったか!


 その時私は有頂天だった。全ては私の計画どおりに進んでいると、あともう一押しで●カを後継者から引きずり落とせる。そして私とオリヴィア様は解放される。



 全て私の手のひらの上で転がせているんだと、その時の私は傲慢にも思い込んでいた。




 ハリーがオリヴィア様の寝込みを襲うのも、予想していたから未然に防げた。

 つい頭に血が上って、殴ってしまったのはご愛敬だ。罰は謹慎程度で済んだ。


 それより、●カはやっぱり●カだなと……

 今まで音楽の同志だったオリヴィア様には嫌われ、魂の恋人ジェニーの怒りはどれほどになるんだろうかとほくそ笑む。



 そうしていたら、私が一生後悔するような事件が起こってしまった!



 ジェニーの怒りは、オリヴィア様に向かってしまったのだ!

 私が謹慎で側にいない間に……!



 希代の音楽家の両手を潰すなんて、信じられなかった。


 ただのピアノ弾きで、芸術家ではないあの女の愚かさを甘くみていた。


 自分がいかに傲慢であったか、愚かな人間だったのか、ただオリヴィア様に申し訳なくて堪らなくて……もう計画なんてどうでもいい!



 とにかくこの家から、彼女を解放してあげなくては!


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