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33 お飾りの妻の私と、心を壊す真実

 ふらふらと廊下をさまよう。

 食べることも、眠ることもできない。


「こんな私でもクリス様は自由にして下さるのかしら」


 でも、自由になってどこに行くの?


 私はもうピアニストじゃなくなったのに。



 そのままあてもなく、廊下を進む。

 すると開いたドアから明かりがもれ、言い争う声が聞こえてきた。


 そっとドアの隙間から中を見ると、そこいたのはハリー様とクリス様……





「ハリー様にとっては可愛らしい女かもしれませんが、あれは苛烈な女ですよ! 目移りすればこんな事になるくらい予想できたでしょう!」


「あそこまでやるとは思ってなかったんだ。オリヴィアの指を潰すなんて、とんでもない事をしやがって! まだまだ利用価値があったのに!」


「……もう利用価値がなくなりましたし、そろそろオリヴィア様と離縁してもいいんじゃないですか?」


「ん~それ、やめようと思って」


「……どういう事ですか?」


「当初のお前の……クリスの立てた計画はふたつ。まずは、僕の夢であるブラクトンホールでのコンサートを、オリヴィアを利用して実現する。まぁこれには不満はあるけど、お前のもくろみ通り一応実現はしたな」


「で、ふたつめは……オリヴィアをお飾りの妻にして、貴族の女を妻にしろってうるさい父上を黙らせて……適当な時期に離縁して追い出して、ジェニーと再婚するって話しだったけど……ジェニーのあの性格で、公爵夫人が務まるか不安になってきてさ~~オリヴィアは大人しいし、20代になっていい女になってきたし、あれに私の子を産ませてやってもいいかなって思ってきたんだ」


「それは…」


「ホント、クリスはいい奴見つけてきたよな~~」

 にやにやとハリー様が笑う。


「大人しくて、文句も言わない、虐待児だったから、どんな扱いしたって実家は抗議してこない。全部こっちの言いなりにできる便利な女。しかも美人でピアノの天才、その才能もいいように使えるなんて……ま、ピアノに関しては今後分からなくなっちゃったけど、クリスは、最高の駒を見つけてきてくれたよ。しかも、オリヴィアをうまくおだてて信頼させて、しっかり利用しちゃうなんて……さすが策略家のクリス様だな!」


 これは現実なんだろうか。


「不本意な演奏だったけど、オリヴィアを上手く利用してブラクトンホールで演奏するっていう夢も叶えてくれたし、契約どおりお前を僕の側近からはずしてやるよ。それがお前がオリヴィアを利用してまで、叶えたかった望みだったもんな」


「……はい」


「でも、オリヴィアはまだまだ利用できるから離縁はしない。あれは一応貴族だし適当に子を産ませて、年を食ってきて飽きたら離縁してやるよ。その時はお情けで、クリスが拾ってやるか?」


「ですがもう3年たちましたし、子を成せない欠陥品として今すぐにでも離縁できますよ? 待ち続けてるジェニー嬢が可哀想じゃないですか。オリヴィア様は充分良い働きをしてくれたし、このあたりで褒美として解放してやっても……」


「なに今さら良い人ぶってんの? そもそも僕にオリヴィアを利用する計画を持ち込んできたのはお前だし、実行したのもクリスだろ?」




 ふらついて、開いていたドアに身体をぶつけてしまった。

 その音が響き、振り返ったクリス様と目があう。



「オ…リ……」


 堪らなくなって駆けだす。




 だが私はいったい、どこに行けばいいのだろう。


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