表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/76

30 お飾りの妻の私と、憧れのブラクトンホール

『バイオリン王子と白ウサギのコンサート』は芸術大賞、新人賞受賞のふれこみもあって、ブラクトンホールでのコンサートは日程3日分、全日完売。

 追加公演で2日間延長され、今日はその最終日だ。


 観客席の中央には貴賓席があり、そこには国王陛下、王妃殿下、王太子殿下のご臨席があった。そしてあのクレバー夫人の発表会で演奏されていた王女様は筆頭侯爵家に降嫁され、その5歳と7歳になる二人のお子様と一緒にお越し頂いていた。


 私はいつもよりもふわふわなドレスを着て、ウサギマスクに髪にはウサギ耳までつけてピアノを弾いた。

 私の後ろにはクマ、イヌ、ウマのマスクをかぶった3人のバイオリニスト、チェリスト、ヴィオリストが控え、掛け合いの演奏も私とハリー様を交えて5人になれば非常に賑やかだ。観客から歓声や笑い声、拍手が起こり、その一体感でホール全体が一つの楽器になったかのようだった。


 最後には我が国の国歌を奏でながら、観客たちに斉唱を促すと最高潮の盛り上がりをみせ、コンサートは無事終了した。


 私は心の底から音楽を楽しみ、興奮し、酔いしれた。


 この幸せな時間を一生忘れることはないだろう。




 次の日の新聞に、このコンサートの事が記事になった。

 ご臨席頂いた国王陛下が、国歌斉唱を殊のほか喜ばれ、声明を出されたからだ。


「何だよ! この記事は!」


 ハリー様が、新聞を床に叩きつけた。


『新感覚のピアノコンサートに絶賛の嵐』

『計算されたパフォーマンス! これを「おふざけ」と言うなかれ』

『超絶技巧のピアニストが観客の心を掴む』

『ウサギのピアニストの正体は!?』


「私のことが何も載っていないじゃないか!」


 薄々この結果は予想できた。

 クリス様は私にもう音を抑えろと言わなくなったし、練習をしないハリー様に代わってピアノパートが8割方を占めていた。


「お前、騙しやがったな!」


 ハリー様がクリス様の胸倉をつかむ。


「ブラクトンホールでは、今までのプログラムでは通用しないと申し上げたはずです。新曲や難曲も取り入れましたし、パフォーマンスも増やし構成も変えました。その練習を嫌がったのはハリー様です。ですから仕方なくピアノパートを増やすしかなかったんです」


「だからって……! こんなの騙しじゃないか! それにこの手紙の束は何だ!」


「ウサギへの……オリヴィア様への出演オファーです」


「バイオリンの巨匠ラムダに、キングストンオーケストラ、『レコード』への録音依頼に、隣国からのコンサート依頼……王女様のサロンへの誘いだと!?」


 錚々たる名前の羅列にびっくりする。


「こんなこと許さないからな! お前は私の妻だ! 夫に従え!」


 そう吐き捨ててハリー様は出て行った。

 彼は次期公爵で社交界の有名人だ。そんな人を怒らせてしまって大丈夫なのかと、クリス様を見上げる。


「大丈夫です。必ず貴女を解放して差し上げます」


 クリス様はそう言い、疲れているだろうと部屋まで送ってくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ