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25 お飾りの妻の私と、ジェニー嬢の暴言

「娼婦あがりの偽物貴族女が、ハリーにしがみつくんじゃないわよ! あんたなんかただのお飾り、愛されてるのはあたしなの! 」


 久しぶりに見る彼女は、顔を真っ赤にして私を睨みつけた。


「練習とか言ってハリーを引き留めて、コンサートとか言って国中を旅行して! ちょっとピアノが上手いからって調子に乗ってんじゃねぇ!」


 そう言って私を押しのけ、ウォルドグレイヴのピアノで乱暴な演奏をする。


「どう? あたしの演奏! パブでは大人気だったのよ!」


 あまりに酷い音の羅列に、身体が硬直する。


「あんただけ帰ってきて……ハリーはどうしたのよ!」


「ヒーガン子爵夫人からご夕食のお誘いがあると…」


「あんた妻でしょ! しっかりハリーの手綱を握りなさいよ! 正妻のあんたは最愛の恋人であるあたしの元に、きちんとハリーを帰らせる義務があるの! ピアノばっかり弾いて、妻の仕事を怠ってんじゃないわよ!」


 肩で息をしながら興奮していた彼女だったが、次はニヤリと侮蔑を含んだ笑みを浮かべる。


「まぁそっか~~妻の一番の仕事は怠ってばっかりだもんねぇ。お飾りの妻なんて可哀想~~毎晩ハリーと愛し合ってるのはあたしなの! ハリーの子、次の後継者を産むのはあたしなの! あたしが子どもを産んだら、あんたなんてすぐ追い出してやるんだから!」


 固まったまま突っ立っていると、メイドに声をかけられた。


「ハリー様がお帰りになられました」


 騒ぎを聞きつけたのか、ハリー様が音楽室にやってきた。




「きゃ~ハリ~」


 ジェニー嬢はピアノから離れ、ハリー様に飛びつく。そして二人は熱烈なキスを交わし始めた。


「もぉ~ハリィ~未亡人とやっちゃったんでしょ?」


「まぁ望まれたからね。女性からのお誘いは断れないよ」


「やだ~やだぁ~~愛してるのはあたしだけだって言ったくせにぃ~!」


「もちろんだよ! 愛してるのはジェニーただひとり。あんなのはただの挨拶みたいなもんさ」


「嫌! 嫌! ハリーはあたしだけのものなのにぃ~~最近、バイオリンばっかり弾いて、私の相手をあんまりしてくれないし、淋しいよぉ~」


「ごめん、ごめん」


「コンサートとか言ってあの女とばっかりいて。夫を癒せない、愛されていない、妻なんて名ばかりの女なのに~~」


「オリヴィアも色々頑張ってくれているんだよ。もっと優しく接してやってくれよ」


「色々って……! ただピアノを弾いてるだけじゃない! ピアノだったらあたしの方が上手く弾けるし、毎日ハリーの心と身体を癒してるのはあたしだし、ハリーの子を産むのもあたしだよ? きちんと立場を分かってもらわないと」


「そりゃ今の人気は、僕自身のバイオリンの才能で確立したものだけど、彼女は伴奏者だからね。少しは功績を認めてあげようよ」


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