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24 お飾りの妻の私と、ハリー様とのコンサート

 それからのクリス様の仕事は早かった。

 まずは小さなホールで、主要貴族に招待状を送り、無料のコンサートから始まった。


 ハリー様は金の刺繍で彩られた真っ白な衣装に真っ白なマントを着こみ、まさに王子様のような出で立ち。

 そして私は真っ白な綿をつけたウサギの仮面をつけ、さらに真っ白なオーガンジーが幾重にも重なる、ふわふわのドレスを着ている。


 ハリー様は社交界では知られた方だが、私はデビューもしていないし、顔も知られていない。それならば素性を隠し、謎のピアニストとして売り出した方が話題になるだろうとの、クリス様の提案だ。




 結果、大成功だった。


 拍手は鳴りやまず、楽屋にはハリー様の知人が多数押しかけ、口々に絶賛していく。

 あのウサギのピアニストは? と皆が尋ねていたが、私はすでに仮面を外し地味なドレスに着替え、楽屋の隅に座り込んでやり過ごした。



 その夜は三人で祝杯をあげた。

 ハリー様は上機嫌で、すっかり酔っぱらっていた。


「アンコールが3回もあったね! ありがとうオリヴィア! 君のお陰だ。君を妻にして本当に良かった!」


『妻にして良かった』なんて…こんな言葉を言われて私はとまどい、でも心は温かくなった。

 お飾りの妻だけど、私は役に立っている。

 そしてその事に感謝されている。


 私の音楽が必要とされている。





 こんな無料コンサートを10回ほど開くと、次第に口コミで人気となり、今月からは倍の人数が入る中規模のホールで、有料のコンサートが開けるまでになった。


 すると世間に一定の評価がされ満足したのか、ハリー様は編曲に参加しなくなってきた。コンサートの規模が大きくなると20曲では足りない。新曲を増やさなくてはいけないのに「二人で適当にやっといて」と言って友人たちと遊びに行くようになった。




 さらに彼の足が遠のく原因が起こったのは、今日のコンサート後に、クリス様から告げられた言葉が始まりだった。


「この後、このホールの持ち主であるヒーガン子爵夫人から、ご夕食のお誘いを頂いております」


「ヒーガン子爵夫人って20代の未亡人だったよね」


「……はい。ご夕食にはハリー様だけでご参加をとのことで…オリヴィア様はお疲れでしょうからこのままお屋敷にお戻りください。」


 不快だと隠しもしないクリス様の表情に、一抹の不安を覚える。



 その後ひとりで屋敷に戻った私は、何となく眠れなくて音楽室でピアノを弾いていた。

 バイオリンのために音や感情を抑えるのではなく、自由に心のままに。



 すると大きな足音と共に、ジェニー嬢が飛び込んできた。


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