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23 お飾りの妻の私と、ハリー様のバイオリン

 ハリー様のバイオリンの腕は中々で、譜面どおりのその音をピアノで支え盛り上げる。素敵な音楽は私の五感を刺激し、夢の世界へといざなう。


 他の人と音を分け合い演奏するのが、こんなに楽しいとは思わなかった。


 ハリー様も楽しかったようで私に抱き着き、感嘆の声を上げる。


「こんなに気持ちよく演奏したのは、初めてだよオフィーリア! 僕たち良いパートナーになるんじゃない? なぁクリス!」


「えぇ。ですが、オフィーリア様ではありません。オリヴィア様です」

 そう答えるクリス様は、また辛そうに口を歪めている。



 クリス様が編曲した譜面は10曲ほどあり、その数曲を続けて合わせてみた。


「うん! どれもいい! けど……」

 ハリー様がちらちらクリス様を見る。


「はい。そうですね。オリヴィア様。ここはもう少し抑えて……バイオリンを引き立たせるようにお願いいたします」




 それからは、ハリー様のお出掛け……主にジェニー嬢とのデート……がない日は合奏を楽しむようになった。


「もう少し音を抑えて、情感を入れずに……もう少し淡々と」

 クリス様の指導が入る。


 この編曲はハリー様の……バイオリンのための曲なので、私はあまり自由に弾いてはいけないらしい。心のままに演奏してきた私には、抑えて弾くというのは中々難しいけれど、純粋に合奏は楽しい。


「いいですね! でもここのパートは、バイオリンとピアノを逆転してみましょうか」


「あぁ~いいじゃないか! すごく良くなった! でもここのフレーズは僕がメインで弾きたいな」


「でしたらいっそ、ここはハリー様のソロにして、ここからは合奏。そしてここはオリヴィア様のソロにするとかどうです?」


「いいんじゃない? 変化があって面白い」


「オリヴィア様はどうですか?」


「……いいと思います」


 こんな風に他人と音楽を作り上げるなんて初めてで、すごく楽しい。



 ずっと一人で演奏し、友達すらいなかった私には刺激的で、毎日が飛ぶように過ぎ去っていく。

 お飾りの妻だと言われて、ここでの生活はどうなるんだろうと心配していたけれど、こんな楽しい日々になるとは思わなかった。




 初日は私に冷たかったハリー様は、実は表裏のない陽気な性格のようで、今は……初めてでよく分からないが……友達とつきあってるみたいだ。


 クリス様は編曲ができるくらい音楽に精通していて、試聴後、素早くアレンジを加えることのできる頭の回転の速さを持っている。いつも落ち着いていて、的確なアドバイスを下さる、尊敬できる方だ。





 合奏も20曲目を超えた頃、ハリー様が私を見つめて提案してきた。


「僕たち、コンサートを開かない?」


「そうですね。このアンサンブルなら、プロとして通用すると思います」


 間髪入れずに、クリス様も同意の声をあげた。


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