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17 少女の私と、替え玉の終焉

「オリヴィアがいなくなったら来月からのコンサートはどうするのよ!」

 ジョンソンさんが部屋を出たとたん、ミュリエル様が声をあげる。


「早急にミュリエルの婚約をまとめましょう! 確かスタンリー侯爵家から婚約の申し出があったわよね! それを受けて、婚約準備のためとかで、コンサートはキャンセルしましょう」


「いやよ! どうしてオリヴィアが公爵家でわたくしは格下の侯爵家なの! ねぇお母さま、わたくしがハリー様と婚約してはダメなの?」


「ハリー様はオリヴィアをお望みなのだ」

 その言葉に返答したのは伯爵だった。


「同じ伯爵令嬢じゃない! むしろわたくしの方が正当な……正妻の娘よ!」


「ハリー様はコンサートの替え玉の事をご存じなんだ」


「え!?」


「世間に知られたくなかったら、オリヴィアを娘と認め、婚約者としてよこせと言われたのだ」


「そんな……!」


「現キャンベル公爵様は元王弟殿下で、甥にあたる今の国王陛下の後見人でもあったお方だ。その後継者であるハリー様に逆らう訳にはいかない」


「そうね。とにかくミュリエルとスタンリー侯爵家との婚約をまとめてしまって……少し早くなったけど、ケガで指が動かなくなったとかで、替え玉はもう終わりにしましょう」


「マティルダ。そういう事だからオリヴィアに何か瑕疵があったらこちらの責任となる。今日からは何もするなよ」


「……分かっているわ」




 執務室を出て、部屋に戻る途中ミュリエル様につき飛ばされた。


「この疫病神! お前が姉なんて寒気がするわ! 知っていたお母様はどれほど苦しんだでしょう! わたくしからピアノを奪って、才能をひけらかして! 舞台で笑って挨拶するわたくしを道化だと笑っていたのでしょう!? 我が家の不幸は全てお前のせいよ!」


 興奮しているミュリエル様は肩で荒い息をしている。


「しかも公爵夫人になるというの? 娼婦の子のお前が? ほほほ、誰もお前なんて認めないし、愛されるわけなんかないわ! お前なんて……お前なんて、死んでしまえばいい!」



 そんなこと言われなくても分かっている。

 ただ、もう男たちの相手なんてしたくないし、ピアノがあればそれでいいの。


 ただそれだけでいいの。





 3日後、キャンベル公爵家に向うこととなった。

 弁護士のジョンソンさんが付き添って下さり、10年間過ごしたアースキン伯爵家を後にした。

 ジョンソンさんは馬車の中でハリー様のことを色々教えて下さった。


「公爵令息なのにとても気さくな方でね、下級貴族にも平民にもお優しい方なんだ。そしてとても優秀な方で、次期公爵として公爵家の業務のほとんどを采配されているんだが、堅実な実績をお持ちで、今は鉄道事業にも着手されていて、素晴らしい先見の明もお持ちなんだ。ご容姿も秀でていて、貴族女性の憧れの貴公子でいらしたから、多少華やかなお噂もあったけれど、中々ご結婚をされなくて、御父上である公爵閣下もとても心配されていたんですよ」


 そんな夢のような貴公子が、本当に私を……?


「そんなお方が奥方にと求められたのがオリヴィア様、貴女様です。公爵夫人として必ずや幸せにして頂けます」


 私の記憶にハリー様との出会いはないが、本当に私をお求めなのだろうか。

 周りの人に死を願われている私、ただ意味もなく生きているだけの私、娼婦の娘で傷物である私、そんな私を本気で望んで下さるなら、持てる全てをもって報いたい。


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