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12 子どもの私と、替え玉ピアニストの始まり

 屋敷に戻ると、マティルダ様に顔と手以外、あらゆる場所を殴られた。


「どうしてもっと子供らしく演奏できなかったの! 自分はこれだけ弾けるってひけらかして! 自慢して! なんていやらしい子なの!」


 あぁ、今日のピアノとホールはすばらしかったな。あのピアノきっと名のある名品なんだろうな。ホールは音の跳ね返りを考えて建てられたのかも。また、あそこで弾きたいなぁ。


「何よ! 少しは泣いてみなさいよ! 人形みたいに真顔のままで……本当に気味の悪い子ね!」




 次の日は、朝から屋敷中が大騒ぎだった。


「ミュリエルに婚約の申込みが山のようにきている」

 アースキン伯爵が机に釣書をばらまく。


「まぁ見て! スタンリー侯爵家からもきてるわ! 夢みたい!」


 マティルダ様がミュリエル様を抱きしめながら、興奮気味にどんどん釣書を開いていく。


「王家からもサロンでの演奏の要請があった」


「それは…!」


 視線が私に集まる。

 昨日殴られた時、お腹の中の骨が折れたのかな? 今日はあまりに痛くて立っているのが辛い。


「……ミュリエルは緊張しやすいとか言って、ホールでしか演奏できないことにしましょう」

 マティルダ様が静かに告げる。


「それでどうするんだい?」


「舞台に立つのはミュリエル、でも演奏をするのはこの子よ」


「……」


「ミュリエルをピアニストとして売り出しましょう。芸術に傾倒している高位貴族は多いとは思っていたけど、この釣書の量! 予想外よ! このまま名をあげれば、侯爵や公爵家、王族との結婚だって夢じゃないわ!」


「でもミュリエルは……」


「ふふっ婚約が調ったら、指をケガしたから弾けなくなったとでも、言えばいいじゃない。その頃にはミュリエルの人となりを知ってピアノが弾けない位、何とも思わなくなっているわ」


「マティルダ……そんな事がもしバレたら」


「大丈夫よ! わたくしに任せて! クレバー夫人との契約は切って、少々実力は落ちても口の堅いピアノ教師を何人か雇いましょう。譜面を読んだり音楽書を読むのに、文盲は困るわ。字も覚えさせなくちゃ。あとミュリエルと過ごすことも多くなるから、最低限のマナーも習得させなくてはね! あぁ忙しくなるわ!」


 マティルダ様が私に近づきその足ですねを蹴りつけ、床にころがった私の髪をつかみ目を合わせる。


「お前はミュリエルの影よ。きちんとわきまえていれば、生かしておいてあげる。明日からメイドの仕事はしなくていいわ。とにかくピアノの腕を磨いて、ミュリエルの評判を上げる努力をするの、分かったわね!」


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