アイリスのドタバタ減量大作戦4
「さて、遅くなりましたが夕食にしましょうか」
ユーリが料理を机に置き、各々の席に着席する。
(やっぱりちゃんと考えられている。さすがだな、ユーリさん)
栄養バランスが考慮されたメニューに感心しながらアイリスは無意識にユーリを見る。
「どうかしましたか?」
「いいえ」
アイリスはユーリに尊敬の目を向けながら目の前の料理を見る。そこで一つ違和感を覚える。
(あれ? この野菜の炒め物……)
ユーリの料理にしてはかなり焦げている。
「あ。やっぱりそれに目が行くんだ」
隣に座っているルイはどこか面白そうにしている。
「お! さすがアイリスだ! お目が高い! それは俺が作ったんだぞ!」
「オーウェンさんがですか!?」
普段料理をしないオーウェンが料理をすることはかなり珍しい。
「えーっと……少々焦げていますが私が監督した上で食卓に出していますので、安心してください」
苦笑いを浮かべてユーリが補足する。ユーリが大丈夫と言うのなら大丈夫なのだろう。
「う……それは大目に見てくださいよ、ユーリさん」
「見てるじゃないですか」
ユーリはため息を吐く。
「俺はアイリスに食べてほしいなって」
オーウェンの声がどんどん小さくなっていく。
「私に……ですか?」
オーウェンは唇を尖らせながら頷く。
「オーウェンさん……!」
アイリスは自分の為に作ってくれたことを知り、どこか嬉しくなる。
「早速食べてもいいですか?」
「ああ……」
オーウェンは姿勢を丸くして小さくなりながら不貞腐れた様子で返事をする。
「それでは……いただきます」
アイリスは手を合わせてから、オーウェンの作った野菜炒めを食べる。
「美味しいです!」
見た目は凄いが、そこまで焦げた味はしない。
「だろう!」
先ほどまで小さくなっていたはずなのに、今はとても嬉しそうだ。
「ちなみにオーウェンさんは焼くことしかしてないから。切るのとか味付けは全部ユーリさんだから」
ルイがオーウェンへ嫌味を込めながら補足する。
「だってユーリさんがそれしかしちゃいけないって!」
オーウェンは不服そうにしている中、ユーリは苦笑いを浮かべる。
「…………食べ物を無駄にできませんので」
「ひどい!」
オーウェンはまたショックを受ける。
短期間にプラスの気持ちとマイナスの気持ちを行ったり来たりしていて、とても忙しそうだ。
「いい焼き加減で美味しいですよ! オーウェンさん」
「結構黒いけどね」
「ルイ君!」
落ち込んでいるオーウェンをフォローしようとするが、ルイが余計なことを言い、フォローは不発に終わる。
ユーリは咳ばらいをして空気を変える。
「アイリス。野菜炒め以外にも今回は各々料理をしたのですよ。このサラダはルイが。ドレッシングも手作りなのですよ」
「ルイ君が!?」
「何。さっさと食べれば」
「は、はい!」
シャキシャキの野菜と少し酸味が入ったドレッシングの相性が抜群だ。
「美味しい!」
「当たり前でしょ」
ルイはそっぽを向きながら自分で作ったサラダをむしゃむしゃと食べる。
「言っておくけど別にアンタの為じゃ「ゴッホン」…………」
途中でユーリの咳払いが聞こえ、ルイは言葉を止めて無言でサラダを食べ進める。
(もしかして心配をかけちゃっていたのかな)
普段料理をしない人が料理をするのには理由があるはずだ。
そしてすぐにアイリスは自分の減量話を思い出す。
何より先ほどからユーリがアイリスに一品一品紹介したり、勧めたりしている。
「アイリス。こちらのスープはフリードが作ったのですよ」
「フリードがですか!?」
基本的にフリードも料理はしない。できるのかもしれないが、実際料理をしているところを見たことがない。
「…………」
アイリスは黙ってスープを見る。
「飲まないのか?」
フリードは手を動かさないアイリスを不思議そうに見る。
「……これを飲んだら交換条件で何かをしないといけない……とか」
「それは面白そうだな。そうだな……何をしてもらおうか」
「いただきます!」
墓穴を掘ったアイリスは変なことを提案される前に慌ててスープを飲む。
「…………………美味しい」
「アンタって何だかんだフリードさんに甘いよね」
「?」
ルイがアイリスと同じようにスープを飲みながら顔をしかめている。
「明らかに味薄いじゃん」
「そうでしょうか……」
「アンタってまさか味覚音痴?」
「そんなことはないと思いますけど……」
一方オーウェンもスープに目を向ける。
「こんなんほぼお湯じゃん。フリードさんでも苦手なことってあるんだな」
オーウェンは意外そうな顔をしてスープを飲み進めるのだった
***
「フリードの作戦勝ちですね」
アイリスたちが盛り上がっている中、小声でユーリがフリードに話しかける。
「フリードの言う通り、アイリスなら自分の為に作られたものを無下にはしない。それに普段料理をしない人が作った料理に必ず興味を持つ」
「ああ。しかも裏表のない素直なオーウェンがはっきりとアイリスに食べて欲しいと言えば、必ずアイリスは食べるからな」
「この際なので聞きたいのですが、貴方が彼女にだけ自分から関わろうとしている理由は「ユーリさん!」……」
アイリスの助けを求めるような声に、ユーリは言葉を止めて顔を向ける。そして大きくため息を吐く。
どうやらまたオーウェンとルイが言い合いを始めていたからだ。
「ああもう。本当に懲りないですね」
ユーリは慌てて仲裁に入る。
「フリード」
「ん?」
アイリスは喧嘩している二人を気にしながらもスープを飲みながらフリードに話す。
「私、みんなとご飯を食べるの、賑やかで大好きだなって改めて思ったよ。危うく食事を抜いて勿体無いことをするところだった」
アイリスはどこか幸せそうに食事を続ける。そんなアイリスをフリードは満足げに見つめながらフリードも食事を続けるのだった。
ちなみに今の言葉を聞いたオーウェンが嬉しさのあまりアイリスに抱き着き、料理をひっくり返しそうになった挙句、ユーリのお説教が始まるまでの一連の流れが始まるのはすぐなのだった。
こうして他寮も巻き込んだアイリスの減量作戦はあっけなく作戦が決行される前に頓挫することになるのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
アイリスの全力ダイエット話(番外編)完結となります。
お付き合いいただきありがとうございました!
ダイエット……始まりもしませんでしたが……
いよいよ3章が始まり、悪女が出現します!
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