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79 ゾンビの行進

「じゃあ行こうか」

「はい」


 アイリスとフリードは外に出る。ソフィアとサイラスは安全の為置いてきた。


(それにしてもこの地下道が魔鉱石を採掘する山に繋がっているなんて思っていなかったな。まあ、原初の樹がある場所に魔鉱石があるのだから当たり前といえば当たり前なのかもしれないけど)


 アイリスは町の方角を向き、目を閉じる。


(やっぱりこっちに……)


 ユーリたちの気配がこちらに向かってくる気配がはっきりと感じられる。そして纏っている邪悪な魔力の一端も。

 事は急を要する為、アイリスは風魔法を応用して上空へ飛ぼうと魔法を発動させようとする。


「ちょっと失礼」

「え? うわ!」


 いきなり視界が回る。気が付いたらフリードに横抱きで抱えられていた。


「な、なんで!?」

「こっちの方が速い」


 そのままフリードはアイリスを抱えたまま飛行魔法で空へと飛ぶ。


(……………………だったら)


 誰かに助けてもらう、やってもらうだけのアイリスではない。

 アイリスはフリードに魔力強化の魔法を発動し、フリードの飛行スピードが上がる。

 今の自分にできることを考えられるのは彼女の美点だ。

 

「フリード……ごめんなさい、重いですよね」

「ん? いや、羽のようにか…………」

「か?」


 フリードは唐突に言葉を止める。

 今まで前を見ていたアイリスが不思議そうにフリードを見上げる。フリードが不自然に言葉を止めるのは初めてだからだ。


「フリード?」

「人間の、生きている重量がする」

「じゅうりょ? わああ! つまり重いってことですよね! すみません!」


 別に重いと言われたわけではない。ただ重量という言葉の音の響きがアイリスにとって自分が重いと思ってしまったのだ。


「減量します! いや、抱えられる機会がなければそんな必要もないのかな……」

「ははっ! 減量する必要は無いと思うぞ。これ以上軽くなったら健康に悪影響を及ぼしそうだ」

「でも」

「まあ減量したければすればいい」

「が、頑張ります!」


 やる気をみなぎらせるアイリス。


「まあ、俺も含め他方向からの多大な妨害にあうと思うけどな」


 フリードが小さくつぶやいた言葉は風をきる音でアイリスには届かなかった。


「フリード! あれを見てください!」


 しばらく飛行してからアイリスは見えてきたものを指さす。アルストレスタの人たちがぞろぞろと歩いている。


「まるでゾンビの行進だな」

「そんなこと言っている場合じゃないです!」

(皆さんの纏っている赤黒い魔力……いや、もうかなり黒く変色している……ここまでなっていなかったのに)


 アルストレスタの人々の纏っている魔力という名の呪いの色が以前とは明らかに変わっていた。

 彼らは意思がない死んだような目で隊列を組んで歩いている。フリードの言うようにゾンビのようだ。ただ、ゾンビと違い彼らは今も生きている。


「え」

 

 アイリスは見つけたくないものを見つけてしまう。

 

「ふ、フリード……まさかあれって……」

「ユーリたちだな」


 ゾンビの隊列の先頭にはユーリ、オーウェン、ルイがいた。


「見事にゾンビの仲間入りだな」

「やめてください!」

(まずはユーリさんたちを正気に戻さないといけない。カミラさん曰く一人ずつ解呪することは勿論できる。その場合呪いの源を破壊していないのなら一時的になってしまうかもと言っていたけれど、まずは少しずつ……でも、本当にできるかな……)

「……………………」


 フリードの視線にアイリスが気が付く。

 フリードは何も言わない。でも今はその無言がアイリスをひどく安心させた。


(私は今、ひとりじゃない)


 フリードの全幅の信頼と味方でいてくれるという優しいまなざしがアイリスの心を落ち着かせていた。


「大丈夫です」

「わかってる。……行くぞ」


 フリードは急降下する。最前列にいる仲間たちのもとへ向かって。

 二人は地面に着地するといち早く動き出すのはフリード。オーウェンがこちらに向かって魔法を放とうと手を掲げ、それをフリードが手で弾く。


「今だ」

(解呪の方法はカミラさんも分からないらしい。解呪できる魔力を持っているとしか教えてくれなかった。思いつくのは結界魔法のように分析して紐解くという方法で解呪するしか考えられない……だったら)


 アイリスはフリードが作った隙に乗じてオーウェンに触れようと手を伸ばして突っ込む。

 触れた瞬間赤黒い魔力が光となって飛散していく。


「え?」

(私まだ分析すらしていないのに……呪いが解けていく?)

「……………………アイリス?」

「オーウェンさん!」


 オーウェンは混乱した様子で自分の腕にいるアイリスを見て驚いている。


「よかった! 正気に戻ったのですね!」

「え? 正気? はっ! それよりなんで俺はアイリスを抱きしめてるんだ!」


 顔を赤くさせてひどく焦るオーウェン。アイリスがとびかかった際受け止めた体勢のまま慌てている。


「!」

「アイリス!」


 フリードの言葉とほぼ同時にアイリスは攻撃魔法を感知し、上空を見る。


(これはルイ君の魔法!)


 ルイの魔力。つまり雷の魔法だ。

 声をかけたフリードはユーリを抑え込んでいる。


(防御魔法はあまり得意じゃないけれど)


 オーウェンの腕の中で防御魔法を使おうとするが、急にオーウェンの手が頭に回され、オーウェンの胸に押し付けられる。その為動くことができなくなってしまう。


「オーウェンさん!?」

「じっとしていろ」


 オーウェンは火魔法で上空からの雷撃を弾く。


「おい、ルイ! 一体どうしたんだよ!」


 ルイは表情を変えないままアイリスたちに手を掲げる。再度攻撃魔法を仕掛けるつもりだ。


(まずい!)


 ルイが再度魔法を放ち、一直線でアイリスたちに襲い掛かる。


「オーウェンさん!」

「うおっ!」


 オーウェンを力いっぱい押してルイの雷撃から回避する。

 それからもアイリスを狙う雷撃が飛んでくる度に走って躱す。


(解呪するにはとりあえず相手に触れないと何も始まらない。もっと距離を詰めないと)


 アイリスは持ち前の身軽さとスピードを利用して雷撃を避けながらルイとの間合いを詰めようとする。

 このまま無駄に回避し続けても体力を消耗するだけだからだ。


(少し強引だけど……)


 今までは横に走って回避していたが方向転換してルイの方向へ走る。

 ルイは表情を変えず、正面へ雷撃を放つ。


(いくつかは避けられるけど……あ!)


 背後には町の人たちがいる。このまま避けてしまえば町の人にルイの雷撃が当たってしまう。


(防御……いや、ここは相殺しかない!)


 防御魔法が苦手なアイリスは即座に選択肢から外して相殺する為に風魔法を放とうとするが、目の前に黒い闇魔法が出現して雷撃を弾いた。

 そしてその隙にアイリスはルイへ突進するように飛びつくのだった。


「ルイ君!」


 オーウェンと同じようにルイの赤黒い魔力も一瞬で飛散していく。


「いたた……なんでアンタが俺の上に乗ってるの」

「よかった!」


 アイリスが突進した勢いのまま、地面へ倒れた二人。

 アイリスはルイの正気に戻った様子を見て安心して改めて抱きつく。


「ちょっと。首しまってるんだけど」

「あ」


 慌ててルイの上から降りる。


(あとはユーリさん!)


 アイリスは方向転換してユーリの元へ走る。


「何なの一体」


 ルイがアイリスを見送りながらつぶやいた。


 最後にアイリスはユーリへ駆け寄り、手に触れるとオーウェンやルイと同じように赤黒い魔力が光となって飛散した。


「あれ……私は一体……」

「よかった……フリードもありがとうございます」


 そもそもこの中でユーリという存在は支援タイプであることもあり、やっかいな存在でしかない。オーウェンやルイのどちらかと一緒に魔法を使っていたらアイリスは簡単に解呪できなかっただろう。

 それを見越してフリードはオーウェンの隙を作った後、即座にユーリを封じていたのだった。


「いえいえ。お役に立てたようなら何より。でもまだ安心はできないみたいだな」

「……………………!」


 アイリスたちの周りを目が虚ろなアルストレスタの人たちが囲っていたのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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