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53 呪いの地へ一歩踏み込みます

お待たせいたしました!

更新再開です!

「ここが魔鉱石の有名な町、グラフトン領アルストレスタ!」


 ここは今回の任務地であるアルストレスタ。

 キョロキョロと周りを見渡すが、実のところまだ町には入っていない。町の前で町長を待っているのだ。


「アイリス、探検するか!」

「はい!」


 オーウェンとアイリスは今にも飛び出していきそうだ。しかし大きな咳払いが聞こえ、アイリスとオーウェンはピタリと止まる。


「二人とも。ここには遊びに来たのではないのですよ」


 寮の母であるユーリの圧のある言葉に二人はたじろいで「はい」と返事をするのだった。


「しかし普段使っている魔法具の源である魔鉱石の主な採掘場がこちらなのは興味深いですね」


 ユーリは遠目で町の様子を見るのだった。

 魔法具とは、魔鉱石に第三者が魔法を付与することで自分の属性関係なく魔法を発現できる魔法石を作り出し、それを埋め込んだ道具のことだ。その為魔鉱石がどれだけ重要なのかということは生きている人間皆が知っている。


「大変お待たせしました」


 一人の男がこちらへやってくる。どうやら町長らしい。


「私はこのグラフトン領アルストレスタ、町長のヴィットーリオ・シールズと申します。遠路遥々ご足労頂き、大変感謝申し上げます」


 きれいにお辞儀をする町長のヴィットーリオ。その所作からも気品があふれている。そもそもこの国において、町を管理する町長や、領主は貴族がほとんどだ。その為ヴィットーリオも紛れもなく貴族なのだった。


「お出迎え、大変感謝いたします」


 ユーリがお辞儀をし、各々挨拶をしていく。


「それでは町の中へどうぞ。魔鉱石以外何の取柄もありませんが」


 ヴィットーリオの案内で順々に町へ入る。アイリスも続いて入ろうと一歩町の地面を踏みしめた時だった。


「うっ……」


 アイリスは急な息苦しさを感じた後、目の前が真っ暗になった。










「アイリス!」


 アイリスの後ろにいたルイが地面へ倒れたアイリスに声をかける。前にいたフリードやユーリ、オーウェンも慌ててアイリスへ駆け寄る。


「アイリス、アイリス」


 フリードが地面に倒れたアイリスを抱えてゆっくり名前を呼ぶが、一向に目が覚めない。


「やっぱり連れてこない方がよかったんじゃ」


 ルイが呟く。確かに戦闘が起こった際にいきなり倒れたらそれこそ命にかかわる。


「さすがに一人残すのは心配ですし、何せ今は『魔女狩り』もあり物騒です。そもそも……いえ、ちょっと待ってください。何か様子がいつもと……」


 ユーリが気を失っているアイリスを見て違和感を覚える。オーウェンは少し驚いた様子でアイリスを見る。


「アイリスの……魔力が……乱れている……?」


 どうやらユーリだけではなく、オーウェンも感じたらしい。


「なるほど。他の人間にも感知できるくらい乱れたということか」


 フリードはすっと右手をアイリスの額に乗せる。淡い光がアイリスを包み、しばらくするとフリードはそっと手を離した。


「んんんん……」


 アイリスの顔色が元に戻った様子を見て周りは安堵するのだった。









(あれ……?私……)


 ゆっくり目を開けると周りにフリードたちが集まっており、心配そうな視線でアイリスを見つめている。


(もしかして……またやっちゃった……?)


 周りの様子からして一瞬で何が起こったか理解するアイリス。


「体に異変を感じるところはあるか?」

「い……いえ」

「起きられるか?」

「は、はい」


 フリードの手も借りながらゆっくり身を起こす。特に体に違和感もなく立ち上がることができた。


「フリード。貴方知っているのですか? アイリスが突然眠ってしまう原因について」


 ユーリがフリードへ視線を向ける。アイリスも驚いてフリードを見上げた。


「直接的な原因は分からない。ただ、突然眠ってしまう原因は魔力の乱れ。今まではその乱れが微弱だった」

「……」

「しかしここにきて全員がその乱れを感知できるくらいになってしまった。これが偶然かそれとも……」


 ユーリははっとしてアイリスの足元を見る。アイリスも一緒になって自分の足元を見る。


「一歩……」


 この町に足を踏み込んですぐのことだ。


(何かがこの町にある……? 依頼内容の『呪い』と関係している……?)


 アイリスは町を見渡す。


「もしお嬢さんが大丈夫であればご案内いたします。皆様がお休みできる場所を手配しておりますので一度休まれるとよろしいかと」


 ヴィットーリオは顔を青くしている。何せこの町に入った途端アイリスが倒れたからだ。

 アイリスたちはヴィットーリオの案内に従って歩き出す。しかしアイリスはすぐ重大な問題に直面した。


「あの……フリード…………大丈夫ですよ?」

「ん?」

「あの……大丈夫なので手を離していただけたら……」

「駄目」

「……」


 アイリスの手はフリードによって繋がれている。アイリスに歩調を合わせ、エスコートするように歩いている。なんだかそれが妙に恥ずかしいので離してもらおうとするが、取り付く島もなく却下されてしまう。


 加えて町の人たちの視線、特に女性からの視線が強く、かなり痛い。すべてはこの手つなぎが原因だとアイリスは感じていた。

 

「公然とイチャイチャしていると逆に清々しいね」

「イチャイチャ?」


 ルイの言葉が理解できず首を傾げるアイリス。

 

「それに加え美男美女だと大変だってことですよ」

「え?」

「いえ」


 前を歩いていたユーリが少し面白そうに言う。実際アイリスは女性の視線が突き刺さっているが、男性の視線も浴びていたのだった。


 しかしアイリスは男性の視線には気づかない。それよりもトラブルを引き起こす自身の鮮やかな桜色の髪のこともあり、さり気なく男性たちから注がれる視線よりも、目立ちたくないという思考が先に来てしまい、気づくことはなかったからだ。


 目立たないように外套のフードを深く被って対策はしているが、いつ自分が原因でトラブルに巻き込まれるか分からない。周りの人たちに迷惑はかけたくないのだ。しかし外套から少し見える彼女の端正な顔立ちに町の男たちの目を惹いてしまうのだった。


「フリード……」


 どうしようかと思いながらフリードを見上げるアイリス。とりあえずこの女性からの視線をどうにかしなければならない。その為にも手は離してもらわないと。


「離してもいいけどその代わり抱えるってさっき言っただろう。抱えていいのなら」

「ごめんなさい。それだけは……」


 取り付く島もなく、もう受け入れることしかアイリスに選択肢は残されていなかった。倒れたアイリスをフリードは最初抱えて移動するつもりだったようだが、アイリスが抵抗した結果、譲歩で手をつなぐことになったのだ。


(抱っこなんてされたらこれ以上に視線が集まる……)


 アイリスは顔を青くする。


「アイリス一人くらいなら俺だって抱えられるぞ!」


 オーウェンはなぜか握りこぶしを作り張り切っている。


(そういうことじゃないんだけど……)


 アイリスはがっくりと項垂れる。そこに元気のいい声が聞こえてくるのだった。


「待ってー!」

「待つかよ!」

「鬼が来たぞー!」

「キャー!!」


 どうやら子どもが外で遊んでいるらしい。治安も悪くないらしく、平和そのものだ。


「あれ?」


 アイリスはそんな子どもたちを見つめてから一つ路地裏の影を見つける。その影は悲しそうに路地裏に入ってしまったのだった。

読んでいただきありがとうございます!


この度短編を投稿しました!


『愛想を振りまき夫を立てることが責務なら、そんな婚約は破棄させていただきます!』

https://ncode.syosetu.com/n3397lk/


こちらは元婚約者をボロ雑巾にする物語です!

お時間がある方、サクッとざまぁが読みたい方等お楽しみいただけますと幸いです!

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