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52 怪奇案件、到来

「初任務……です!」


 アイリス、フリード、ユーリ、オーウェン、ルイは揃って学園の扉から外へ出た。

 アイリスは昨日の夕食のことを思い出す。




***

 

「本当にすみません……」

「気にしないでください。それにしてもよほど集中していたようですね」

「……………………そうみたいですね」


 すっと視線を逸らす。結局図書館ではテスト勉強が十分にできなかったからだ。

 フリードがくすりと笑ったところが見えた気がしたが、見なかったことにするアイリス。


「アイリスは体調いかがですか?」

「大丈夫です」


 今日はまだ突然眠ってしまう現象は起きていない。そもそも体に不調を感じてはいない。


「申し訳ないのですが、急遽明日任務が入りまして」

「! 任務!」

 

 アイリスにとっては初めての任務だ。借金もある為アイリスは俄然やる気を出す。一方隣で食事をしているルイは顔を顰めていた。


(面倒なんだろうな…………)


 出会ってからまだ大した時間はたっていないが、ルイが何を考えているのか分かるようになっていた。


「ランクはBですが、全員参加を命じられています」


 任務にはDランクからSランクまでのランクがついている。Sに近づくほど任務の難易度が難しく数多の知識や魔法能力、戦闘力が必要だ。また、Sランクに近づけば近づくほど報酬は高くなっていく。

 

 ちなみに任務とは学園の掲示板から自分たちで探す方法と、学園側からの要請の二種類がある。どうやら今回は後者のようだ。


「Bランクで全員ですか。楽勝じゃないですか。アイリスに感謝ですね」


 ルイは嬉しそうだ。

 

 学園からの要請については寮の総合力を鑑みて決められる。この寮ではアイリスが来るまでSランクとAランクの魔法師しかいなかった為、任務ランクはS、Aランクばかりなのだった。しかしアイリスというCランクの魔法師が入ったことにより、普段より下のランクの仕事が来たようで、難易度は低くなる。


(素直に褒められるとそれはそれで…………)


 ルイはどうやら楽できると嬉しく思っているようだが、ユーリは難しい顔をした。


「ルイ、逆です。Bランクで全員というのが怪しい」

「え?」

「つまり、たとえBランクでも俺たち全員に要請がかかるのはおかしいということか」

「その通りです」


 フリードが話をまとめる。どうやらいくらBランクの任務をやるにしても全員はおかしいということのようだった。


 任務を行う上で基本的に人数の指定はなく、裁量で請け負うのが基本だ。しかし今回は『全員』と強制されているので珍しいのだ。

 

「おそらくですが私の見立てですとAランク若しくはSランクレベルの任務だと考えるべきだと思っています」

「Sランク!?」


 いきなりSランク相当とは聞いていないので、アイリスは驚いた声を上げる。


「そもそもいくらアイリスがCランクでもこの間の寮対抗戦を見た学園側がBランクの任務をまわすわけがない」


 フリードの言葉にユーリが頷く。二人の様子からするとアイリスの評価が高く聞こえる。


「あのでも! 寮対抗戦では私お荷物でしたし学園側がBランクの任務を要請することは妥当なんじゃないのですか?」


 アイリスは寮対抗戦でメンバーに助けてもらいながら動いていた。自分ひとりの力で成せたことなど覚えがない。


「うわ……何言ってるの」

「確かにあの戦いを見てそうなるのはおかしいな」

 

 かなり引いた様子のルイがありえないといった顔でアイリスを見る。一方オーウェンはなぜか誇らしげだ。

 

(お二人の反応の落差がすごい……!)


 寮対抗戦ではアイリスの機転の利いた戦法や珍しい四大属性の風魔法の発現もあり、見ていた観客や学園側から一目置かれるようになったアイリス。しかしアイリス本人は気が付かない。


「はあ。……話を戻します。私もフリードと同意見です。何より任務内容が怪しい」


 どこからか紙を出したユーリが机の上に置く。それをアイリスがちらりと見る。


「……呪いの解呪?」

 

 アイリスが読み上げるとルイは「うわ」と低い声を上げる。


「さすがに怪しすぎますね……」


 オーウェンですら怪しんでいる。一瞬任務とはこういうものが多いのかとアイリスは思ったが、どうやら違うらしい。


「ちなみにいつもはどういった任務をしているのですか?」

「そうだなあ……人さらいの解決や魔法を使って悪いことをしている人たち、つまり魔法犯罪者の捕縛、護衛からランクが低ければ猫探しまで様々なんだ」


 オーウェンの説明でアイリスは納得する。

 

(意外と社会貢献というか……魔法の何でも屋さんみたい……)


「オーウェンの言う通りいつもと違う毛色の仕事です。私も気になって学園側に聞いたのですが……」


 ユーリいわく、どうやら当初はきちんとBランクの任務だった。以前派遣された魔法師によって一時的には呪いは解呪されたが、実際は解呪されていないことが確認されたのだ。


「だから私たちのような普段Bランクの任務なんて行わない寮に声がかかったのだと思います。何せアイリスもいますしBランクの任務が来たとしてもおかしいことではありません」

「すみません」


 結局は自分のランクのせいでこの奇妙な任務を行うことになってしまったと謝ると、ユーリが慌ててアイリスのせいではないと言うのだった。


「とにかく、こういった任務は裏に何かあります。気を引き締めましょう」


 全員が頷く。オーウェンは困ったように頬をかく。


「ユーリさん、そういえばそもそも呪いって何なんですか?」

(確かに……考えられる要因としては三つ。闇魔法の『呪い』の効果によるもの。それか何かを『呪い』という言葉で置き換えているか。それか本当に呪いという別種の力が存在するのか)


 アイリスは深く考えるが、ユーリは難しい顔をした。


「どうやら現地で説明されると。恐らくこの『呪い』案件は外部へ漏れないよう隠匿されているようです」

「……………………………………」


 すべては現場に行ってから。そう話がまとまったところで少し冷めたスープを口に運んだのだった。





***

 

(初任務……頑張らないと!)


 初任務日、アイリスは気を引き締め出発する。

 

「張り切りすぎて転ばないでよ。転んだら容赦無く置いていくから」

「気をつけます……」


 アイリスが気合を入れたことを隣にいたルイが感じたらしい。ちなみに目的地は徒歩で行くこととなった。


「追いついた! アイリスちゃん!」


 パタパタと学園の方から走ってくるのはクラスメイトのエレナだ。


「ごめんなさい! ちょっといいかしら」


 アイリスの腕をグイグイ引っ張ってフリードたちから距離を取る。

 そしてキョロキョロ周りを確認した後小さな声で話すのだった。


「ごめんなさいね。今日が初任務日なんて知らなくて……」

「いえ。…………その……何かあったのですか?」

「ずっと言おうか迷っていたの。でもアイリスちゃんは私のかけがえのない友達だから」

「?」

「私はアイリスちゃんに……………………忠告する為に、追ってきたの」

「え?」

「あまり寮のメンバーを信用しちゃ駄目よ。特に……………………フリード・ファーディナンド様は」

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