36 一方的な私怨
偶然出会った親切なアルフィーの案内でようやく闘技場に着いたアイリス。闘技場に入るといきなり頭上に衝撃が走るのだった。
「いった!!」
「ちょっと。一体どこに行ってたの」
「ルイ君……ごめんなさい……でも……グーは…………痛いです……」
どうやら拳骨されたようだ。じんじんする部分を手で覆う。
「はあ」
ため息を吐き、ルイはアイリスの手を取って歩き出す。
「迷子で捜しまわるのはもう勘弁だから」
どうやら会場内迷子防止策のために手を繋いでいるらしい。ただ、心底迷惑そうな顔をしている。しかし闘技場へ入った瞬間ルイと会ったことと、先ほどの言葉からしてもきっと探してくれていたのだろうとアイリスは予想する。
「ご、ごめんなさい…………探してくれていたんですね……ありがとうございます」
「別に」
そして少し歩いてからアイリスの悲劇が別に起こった。
「あー!! いたぞ! アイリスだ!!」
大きな声が響き渡る。犯人はオーウェン。大きな声で大いに目立ち、周りの人がアイリスを見る。周りの視線から逃げるようにおもわずルイの背中に隠れる。
「ちょっと。何隠れてるの」
「視線が………………」
それからすぐになぜか持ち上げられ、足から地面の感覚が無くなる。
「やーっと見つけたぞ!! 心配したんだからな!!」
持ち上げたのはオーウェン。それからグルグルとまわされる。
「ううううううう目がまわる……」
「無事でよかったああああ!!」
それからぎゅうぎゅうと抱きしめられる。
「背骨が…………全身の骨が…………」
あまりの力強さに全身がミシミシと不吉な音を鳴らしている。オーウェンに悪意は全くない。
「無事見つかったのはよかったですけど、そこらへんにしないとアイリスの全身の骨が折れますよ」
「あ。って俺は一体何を……!」
オーウェンは真っ赤になってアイリスから離れる。離れるということはそのまま手を離されるということだ。そのままストンと地面に落とされ尻餅をつく。
「いたっ!」
落とされた衝撃と骨の痛みに悶えながらも顔をあげたら今度はどこか黒い笑顔をしたフリードが。
「で……でました!!!!!」
「ん?? 何が出たって??」
ニコニコしている笑顔が恐ろしい。
「ごごごごごめんなさい!!!!!」
(ま…………魔王だー!!!)
あまりのフリードの表情に条件反射で謝る。
「うん? 誰が魔王だって??」
ニコニコ顔が恐ろしい。
「え?」
「あはは……声に出ていましたよ」
ユーリの言葉で我に返り、口を手で押さえながらフリードを見る。
「はあ。まあ間に合ったからよかったけど。あんまり心配かけないで」
「心配? 迷惑かけてごめんなさい……?」
寮対抗戦は全員で出場するもの。アイリスは迷惑はかかったかもしれないが心配される理由がよくわからないのだった。
「…………………………」
フリードは首を傾げているアイリスを見る。そしてため息を吐きながらグシャグシャとアイリスの頭を撫でる。
「どこかに行くのはいいけれど、必ず帰ってきて」
「ごめんなさい……でも、本当アル君には感謝しかないです……」
「アル? もしかしてアルフィーに会ったのか」
「あ、はい。ここまで案内してもらったんです。フリードはアル君とお友達なんですか?」
「フリードとアルフィーは昔からの顔なじみなんだそうです。そして彼はこの学園で一番探知魔法に長けているんです。本業は分析魔法なんですけどね」
「そうなんですね」
ユーリの丁寧な説明にアイリスは頷く。
「よし! 全員そろったし行くぞ! 今日こそ無駄に女子にモテるアランさんをぶっ飛ばす!!」
「………………え?」
オーウェンが叫んで気合いを入れている。しかし理由に首を傾げるアイリス。
「すみません。オーウェンがアランを……二寮を敵視している理由がこれなんです」
「え……」
一方的な私怨が混ざっているなと思いながらも、変な方向に凄く気合が入っているオーウェンからアイリスは距離を取るのだった。




