30 初めてのお友達
ランスロットの話によると、どうやら魔法にはランクというものが存在するらしく、ランクは上からSABCDとある。
Sランクは一番上で高度な魔法が使える者。
Aランクは優等生レベル。
Bランクは平均的な強さ。
Cランクは劣っている。効果が弱い。
Dランクは魔法が偶然でしか出せない、コントロールができない。
という特徴があるとのことだ。
そしてそれを測るには魔法測定器を使う。測定器には様々な形状があり、魔法を使っていなくても専用の腕輪をつけることで測定される。主に現在の魔力量や質等を測定するらしい。
「では、この腕輪をつけてください。左右どちらでも構いませんよ」
ランスロットに従い、左手首に装着する。
腕輪をつけるとそこには画面と赤、青、緑の魔法石が埋め込まれていた。そして画面に一つのアルファベットが現れた。
「アイリス・セレスティアさんはCランクですね」
「C……」
先ほどの説明からCランクは劣っていることが分かっていたので少し落ち込む。
「だ、大丈夫ですよ!! 皆さん成長してランクは上がっていくものですから!!」
「は……はい……」
少し肩を落としたアイリスにランスロットは慌てて励ます。
「あれ?」
アルファベットが現れてすぐ腕輪についている魔法石が輝きだす。緑色が輝いたと思えば赤い魔法石も輝きだす。
「アイリスさんの魔法タイプは支援タイプが主ですが、攻撃タイプにもなり得るようですね」
魔法には三つのタイプがある。攻撃タイプは攻撃が得意。防御タイプは防御魔法や結界系統の魔法が得意。支援タイプは仲間をサポートする魔法が得意といったタイプだ。
そしてこのタイプは人によっては複数タイプ該当する者もおり、アイリスも複数タイプの該当者だったらしい。
(いくら『魔法使い』って言われても、Cランクだったら隠す必要ないんじゃないかな……やっぱり世界をどうこうする力なんて持ってるわけないし、そんな力お断りだよ……)
意気消沈しながらも色々考えたが、とりあえず師匠の言う通りとりあえず引き続き隠しながら生活するしかないのだった。
そしてホームルーム後、アイリスは沈んでいた。
「げ……元気出して!! ランクなんて物差しみたいなものよ。私はBだし」
隣りの席エレナが必死にフォローする。アイリスは必死に名前を思い出そうとするが、先ほどのランクのショックと、アイリス自身の名前記憶容量が限界突破していた為思い出すことができない。
「ありがとうございます……えっと……」
「あ、ごめんなさい。私はエレナ。よろしくね」
「よろしくおねがいします。エレナさん」
(わああ!! 初めての女の子のお友達だ……!)
初めて同い年の女の子の友達ができた嬉しさでランクのことなんて綺麗に忘れたアイリスはエレナに向かって笑顔で返した。
「私……女の子のお友達初めてで……嬉しいです!」
「え、そうなの? アイリスちゃん」
「アイリス……ちゃん……?」
あまり『ちゃん』付けで呼ばれてこなかった為、どこか違和感を感じてしまう。しかし不快ではなく、親しみを込めた敬称にアイリスは少し嬉しく感じるのだった。
「会ってすぐなのに馴れ馴れしかったわね。ごめんなさい」
慌てて謝るエレナにアイリスも慌てて釈明する。
「違うんです! 友達とか……初めてで……嬉しくて……改めてよろしくお願いします。エレナさん」
「エレナって気軽に呼んで! 敬語も大丈夫だよ! 同い年だし!」
「敬語は……その……ずっと敬語で生活していたのでいきなり辞めるのは難しいかも……です」
アイリスは咄嗟に嘘を吐く。
「そっか。口癖みたいなものなのかな? 無理せず話しやすい話し方で話せればそれでいいわ」
「ありがとうございます」
エレナの第一印象は明るくて優しい。アイリスはそれに尽きると感じていた。
そしてアイリスとエレナが話に花咲かせていた時、いきなり大きな声が聞こえ、アイリスはひどく驚くことになる。
「なんだと!!」
「今回も俺の勝ちだな」
「いーや!どう考えても俺の勝ちだろう」
「俺だ!」
「俺だ!」
「俺だ!」
「俺だ!」
どうやら教室の中で二人の男子が揉めて喧嘩しているらしい。
(これ……止めた方がいいのかな……)
基本的にアイリスは平和主義な為喧嘩を止めようと一歩踏み出した時、アイリスの腕を慌てたようにエレナが掴む。
「アイリスちゃん!? 危ないわよ! こっち!」
「え? 危ないって?」
エレナに腕を引っ張られ、教室の隅っこへ行くとすぐにその理由が判明する。
「うわあ……」
いきなり魔法の打ち合いが始まる、火と氷の魔法がぶつかり合い、火の粉や氷の破片があたりを舞う。魔法の欠片は綺麗なものだが、このまま続ければ教室の備品が燃えたり氷漬けになるだろう。
「次移動教室だよ!行こう、ルイルイ!」
(ルイルイ?)
突如場違いな明るい声が聞こえ、アイリスが視線を向けた瞬間、腕をぐいと掴まれて思いっきり下に引っ張られた。突然のことで膝に力が入らない。
「わ!」
瞬時に倒れると悟って衝撃に目を瞑る。しかし思った衝撃は襲って来なかった。
「……え?」
引っ張られた先は空いていた椅子だったようで、そこにストンと座っていた。そして頭上には火の魔法が通過していた。
「あ……!」
腕を引っ張った主を見ると、同じ寮でもあり、朝アイリスを職員室まで送ってくれた人がいた。
「気づくの遅すぎ」
どうやらルイが助けてくれたようで、立っていたら黒焦げだっただろう。
「ルイルイー!」
目の前の喧騒をまるで無視するように明るい声の主がこちらへ歩いてくるが、ルイはとても嫌そうな様子を見せる。
「だから……その呼び方やめて」
「えー!! いいじゃん!」
どうやらルイとクラスの男子が移動教室のため、ルイに声をかけていたのだった。
「ルイルイ、セレスティアさん知ってるの??」
「知っているっていうか……同じ寮」
「えええええええええええ!!!!!」
なぜか話に入っていない人たち、つまりクラスの全員が絶叫したのだった。




