独占欲
姉との電話が終わり、時刻は23:30。改めてスマホを見ると、誠太郎からメッセージが届いていた。
誠太郎:「熱は37度まで下がり、だいぶ動けるようになりました。今日は差し入れありがとうございました。お蔭でぐっすり眠れ、体力を回復できました!そして、わざわざ来ていただいたのに、お会いできずに失礼しました。あの、本当に恐縮ですが、メッセージで約束した写真、お待ちしています。」
まず、彼の体調が回復に向かっていることに、安心した。
けれど、同時に、昨日の女性のことがどうしても頭から離れなかった。あの嫁ムーブをしていた女性、敵意が剥き出しだった。聞かずにはいられない。
亜里沙:「元気になって良かったです。差し入れは、お部屋から出てきた女性に差し入れを預かってもらいました」
湧き上がる独占欲を我慢できない亜里沙は、病み上がりの誠太郎をチクリと刺す。何かを察した彼は、妙に丁寧なメッセージを返してきた。
誠太郎:「ご心配をおかけしました。昨日の女性は、ホテルのコンシェルジュです。私が医者を頼んだ時、服の選択を頼んで、あの時は、非番の彼女が本当にたまたま洗われた僕の服を持ってきてくれただけで…。本当にそれだけなんです。あの、ハンカチの差し入れが入っていて、すごく嬉しかったです。」
ホテルのコンシェルジュー…。彼はそう言っている。それなら鍵を持っていた説明もつく。
でも、彼女は仕事で彼の部屋を訪れたのだろうか?
誠太郎:「この流れで大変恐縮ですが、写真の差し入れもお待ちしています」
誠太郎は、話をすり替えにきている。
このまま追及してもしょうがないので、気持ちを切り替え、話を変えてあげることにする。
「私が伺った時、起きていたんですか?」
「はい。コンシェルジュが、亜里沙さんはインフルがうつると困るので帰ったと言っていました」
コンシェルジュさんの策略にはまったことに気づいた亜里沙。これまで感じたことがなかった怒りを感じた
「あの、亜里沙さん。写真、まだですか?」
亜里沙は誠太郎が夜のデータとで撮った写真を送った。夜景を背景に、亜里沙の横顔がうつっており、バレッタが輝いている。それは、楽しかったあの日の記憶が蘇る、亜里沙にとって、とっておきの写真だった。
亜里沙はその写真を誠太郎に送った。すぐに既読になった。
誠太郎:「すごく、かわいいです。元気になりました。亜里沙さん、僕はあなたの笑顔が大好きです。」
写真を見た誠太郎から、すぐに返信が来た。いつもの飾らない、ストレートな言葉。
亜里沙の胸が、ドキリと高鳴った。
そして、姉の言葉を思い出す。
「彼と、もう一度、ちゃんと話してみて。あなたの気持ちを、素直に伝えてみたら?亜里沙の話を聞く限り、彼はあなたのこと、きっと受け入れてくれるわよ。」
亜里沙:「お話したいことがあります。体調が戻ったら、電話をするお時間をいただけないでしょうか?」
亜里沙にとって、誠太郎と過ごした時間が、かけがえのないものになっている。どうしていいか分からないけど、彼に、思いをぶつけてみよう。亜里沙はそう思った。




