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【誠太郎視点】これは間違いなく運命の出会い

ロンドンのアトリエ、夕暮れ時。西の窓から差し込む斜陽が、無造作に置かれた鉱石たちを赤く染めていた。誠太郎は、来月東京で開催する個展の準備に追われていた。日本との連絡は深夜になるため、今のうちに展示する鉱石の整理、説明書きの文案を作成する。それぞれの石が持つ個性を引き出す作業は、僕にとって最高に幸せな時間だった。


今回の個展のテーマは「運命の出会い」。この言葉が頭に浮かんだのは、あのチャリティオークションの夜がきっかけだった。


あの夜、会場は熱気に包まれていた。高価な美術品を求める人々、シャンパンの甘い香り、そして、僕の心を強く惹きつけた、彼女。

深紅のドレスを纏い、白い肌を輝かせる彼女は、まるで絵画から抜け出してきたようだった。何よりも印象的だったのは、彼女の纏う、高山に咲く花のような、清らかで力強い香り。そして、完璧な微笑みの奥に、何かを秘めているような、そんな瞳だった。


視線が合った瞬間、時間が止まった。

彼女の存在感、におい、空間が、僕の全てを奪っていった。

理屈じゃない。

この出会いは運命だ。

そう直感した。


でも、彼女は触れれば壊れてしまいそうなほど繊細だ。

名前はあえて聞かなかった。

名前を聞いたら、何かが終わってしまう気がした。


彼女と僕の唯一の繋がりとして、アズライトマラカイトを無理やり渡す。


この石が彼女の癒しになってくれたら。

そして、僕と彼女を繋げる懸け橋になってくれたら。


その夜、僕は彼女から受け取ったハンカチを握りしめながら、ベッドに入った。彼女の様々な表情が脳裏に浮かんだ。

優雅な笑顔、焦った顔、そして、フラッシュに当てられた時の、ほんの一瞬見せた強張り。

複雑な表情を見せる彼女は、光をあてすぎると退色してしまう繊細な宝石のようだ。

ハンカチには、彼女の香りが残っている。

不思議と心が落ち着き、不眠症気味の僕には珍しく、すぐに深い眠りに落ちていた。



次の日の朝、僕は、自分のSNSのに、あのハンカチの写真を投稿した。

「昨夜は珍しく良く眠れた。頭すっきり!昨日のこと、何度も思い出している。まるで、夢みたいだった。#連絡ください #DM大歓迎 #即レス #奇跡を信じてる」


もちろん、これは彼女へのメッセージだ。

彼女のペースに寄り添いたい。

でも、このままほっておくと、時間だけが経ってしまって、一夜の出来事として風化してしまうかもしれない。


もし、彼女が僕のことを少しでも思い出してくれたら、

この投稿が届くかもしれない。

僕は、奇跡を信じて、ハッシュタグに思いを込めた。

この投稿が表示されるのは24時間だけ。


投稿後、僕は何度もDMを確認した。

しかし、彼女からの連絡はない。


そんな時、予想外の人物から電話が届いた。

オークション会場で知り合った老紳士、ターナー氏だ。

「君の活動を支援したい。外商を連れてきたから、君の鉱石の情熱をもっと多くの人に伝えるといい。」

と言って、僕のアトリエに日系百貨店ロンドン支店の外商を連れてきてくれるというのだ。


僕はもちろん快諾し、次の日、ターナーさんと外商の武藤さんがアトリエにきてくれた。

僕のこれまでの鉱石採集家としての活動や、鉱石コレクションを案内する。

鉱石愛が高まり、ついつい話過ぎてしまう。

ひとしきり話を聞いた武藤氏は僕に提案する。

「誠太郎さん、あなたの発掘エピソード付きの鉱石は、非常に面白い。集客は当社が支援できます。まずは個展を開いてみませんか?」


これは、僕にとってのビッグチャンスだ。胸が震えた。

僕は思い切って彼に提案する。

「是非、個展をやらせてください。まずは東京、そしてロンドンの二か所で個展をできないでしょうか?」


武藤氏は少し驚いた様子だったが、僕の熱意を感じ取ってくれたようで、興味を示してくれた。


ターナー氏「個展の費用は私が負担しよう。しかし、今回の個展に関する誠太郎の鉱石ビジネスのマネジメントは私がやらせてもらうよ。誠太郎、どうだい?これはビジネスだ。」


展示する鉱石は既にアトリエ内にあり、展示のテーマも、この瞬間に僕の中で明確になった。テーマは「運命の出会い」。

それは、僕が集めた鉱石との出会い、そして、あの夜の、彼女との出会い。


資金面での心配は無くなった。あとは開催までの段取り、展示物の整理、そして集客だ。

武藤氏には東京の個展はできる限り早い時期での開催を依頼し、この日の打ち合わせを終えた。


彼女と出会ってから、良いことばかりが続いている。

まるで、彼女が幸運の女神であるかのようだ。

これが本当に運命の出会いなら、この個展が彼女に繋がるきっかけになるかもしれない。


インスピレーションが湧いてくる。

僕はスマホを開き、SNSを確認する。

彼女からの返信はない。

でも、僕はあきらめない。彼女との繋がりを、なんとかして作るんだ。


僕は、その晩、机に向かい個展の企画書をまとめた。

それは、僕と鉱石との出会いの物語であり、そして、あの夜、彼女と出会ったことで生まれた感情の物語でもある。


東京では、アズライトをはじめとする原石を中心に展示し、鉱石が持つ本来の力強さや美しさを伝える。


ロンドンでは、原石に加え、それらを加工したアクセサリーも展示することで、鉱石の新たな可能性、そして、僕自身のクリエイティビティを表現する。

この個展は、のちに僕が事業家として成長していく最初の一歩となる。


企画書を閉じ、SNSを見る。彼女からの連絡はまだない。


彼女のペースを尊重したいものの、

僕は彼女にまた会いたい。


僕は彼女と一緒の未来がいい。

一緒じゃなきゃ嫌だ。


でも、僕は彼女の名前を知らないし、連絡先も知らない。

彼女から連絡してもらうしか繋がる手段がない。


そう言えば、今日は食事を取っていない。正直、食欲がない。

彼女がストーリーズに来てくれたら、閲覧履歴が残るかもしれない。


なりふり構わず、作戦を決行する。


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