表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

蟻天国にてファンタジー

作者: 藤乃花

原稿用紙に筆、一つの夢……。

寒い寒い外から、落ち着ける自宅に帰ってきた筆尾斗朗ふでおとろうが先ずする事は、念入りなうがい、手洗いだ。

冬のウイルスをしっかり除外して、こたつがあるリビングへと足を急がせる。


斗朗とろうの手には買い物袋が下げられていて、中には冬に欠かせない肉マン、蜜柑、ペットボトルの温かいほうじ茶、そして彼が最高に楽しみにしているファンタジーな文庫本が入っている。


こたつには姉がくつろいでいて、眠たげな表情を斗朗とろうに向ける。

「姉ちゃん、ただいま。

肉マン買ってきたよ」

「お帰り……寒い中、ありがとね。

テーブルに焼き芋あるから食べてね」

こたつのテーブルの角に姉が先程買って来たであろう焼き芋が、ホクホクした湯気をたたせて食欲を誘っている。

「あんがと……良い石加減だったみたいだな、焼き芋くんたち」


焼き芋からたつ湯気を目にした斗朗とろうに、『石加減』というワードが思い浮かんだ。

姉は斗朗とろうの閃きに敏感な反応を示した。

眠たげな表情から、はっきりした表情へと変わりつつ。

「『石加減』だなんて、よく思い付くわね。

斗朗とろうって、やっぱ天……」


姉の言葉の続きを待たず、斗朗とろうの手は抱えている焼き芋を彼女のほっぺに軽く当てる。

ポカポカの熱が姉の肌をユルユルにしてくれた。

「ほぁわあああ……♪」

「まだ、殆ど出来立てホヤホヤだな。

はい、半分!」

「やるな、我が弟……ジゴロめが……」


焼き芋を半分に分け、袋から出した肉マンも姉の手前に置き、斗朗とろうはいそいそとファンタジー文庫本をテーブルに開いた。

この動きを二秒で済ませた。

「肉マンもどうぞな。

外、スッゲ寒い寒い」

「お疲れ、お……それって、あのSF短編集?

遅山書店おそやましょてんさんの?


ページ数が五百枚は在るであろう短編集を目にした姉は、斗朗とろうが放つ『気』から何かを感じ取った。

「そ、二年前のリベンジ!

今回こそ、ちゃんとSF学んで応募する」

「……電子音、聞こえる」

「ん?

何かのアラーム?」

斗朗とろうから、『銀河電子音』……二年前の時よりかは強めの。

つまりは、本気の電子音」


姉が云いたい事は、なんとなく斗朗とろうに伝わっている。

心地よい沈黙の空間、未来の作家を目指す少年の真ん中から伝わる電子音を、こたつの中で姉は感じて昔の夢を見ていた。

〈ボクね、いつか本を書く人になるんだ!〉

こたつは優しい蟻天国……蟻天国は二人を夢気分にしてくれる。

宜しければ、酷評をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ