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覇王  作者: アカハネ
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覇王

周囲すべてから悪意を向けられ、その全てを蹂躙したある一対の物語。

数ある中小ギルド。その一つにルーキーが加入した。


能力は多少抜けてはいたがあくまでも一般的なものに見えた。


でも、ギルドの長はそれに期待をかけた。


そのギルドの規模で育てるには十分な才能に見えたからだ。


自らのノウハウで育てるには適当な素材に見えたからだ。


ルーキーは鍛錬を積みながらの数年後、そこで彼と出会った。






怪物と呼ばれたモノがいた。

伝説と呼ばれたモノがいた。


そして


それに憧れた少年がいた。


その憧れは夢になり、目標となった。


いずれそれと同じ場所に行く。


その横に並ぶことはできずとも、憧れた舞台に立つことを夢に見た少年がいた。


少年は成長しながらの数年後、そこでソレと出会った。




そこからは共に成長し、鍛錬に励み、そして二つは一対となった。


さぁ行こう。戦いの時だ。


ファンファーレが鳴り響き、一対は走り始めた。




開幕に敗け、そこでいきなり怪我を負ってはしまったが、多少の休養で収まった。

それから、早々に1つの栄誉を手に入れた。

ホープや天才を押しのけて「世代で最も速い」称号を手に入れたのだ。

一対は喜び、ギルドは次を期待し、周囲は夢を見た。


それらはすぐに打ち砕かれた。


敗けた・・・(天才に弄ばれた)

敗けた・・・(少年が足りなかった)

敗けた・・・(ソレが足りなかった)

敗けた・・・(最強を争う二対がいた)


打ち砕かれた思いは黒く染まって少年を襲った。


「自分ならもっと勝てた」 ある先達の言葉さ


「何もしていない、それのお気に入りなだけだ」 周囲の言葉さ


勝者の席はただ一つ。


その席に座るものだけが評価されるこの世界。


ギルドは一対に伝えた。


「来年、全部出る。全部勝て。一つでも負けたら次はない」



そして、蹂躙が始まった。




一対は走り続けた。前哨戦も本番も走り続けた。

あの言葉を受けてかどうかはわからない。

一対は勝ち続けた。

ねじ伏せ、心を折り、蹂躙した。




勝った・・・

勝った・・・

勝った・・・(つまらない)

勝った・・・( またか )

勝った・・・(次は負けるだろう)

勝った・・・(・・・・・)

勝った・・・(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)



一対が得たものは、4つの栄誉と悪意だけだった


栄誉はあれど栄光はなく、

夢はあれど期待はなかった。



年末の最終戦。



周りのすべてが敵となった。




ファンファーレが鳴り響いた直後から、一対は囲まれた。

勝利の席を目指すその戦いで、周囲が目指していたのはただ一つ。


一対の破滅だけだった。


同志が、憧れが、全てがただ一対の破滅を願った。


悪意が蠢くその道中、真黒な影が一対を覆った。


少年は諦めた。


道は消えた。


消えたはずだった。


勝者は・・・・一対だった。


なぜ戦えたのか、それは誰にもわからない。


ただ、ソレが諦めなかっただけかもしれない。


こうして、一対は成し遂げた。


年間全勝


未だかつて成しえたモノのない偉業を手にした。


無敗ではない。全勝なのだ。


敗けなかったのではない。


勝ち続けたのだ。

蹂躙したのだ。


失望に、陰謀に、誹謗に、


諦めて下を向いた少年と、決して諦めなかったソレは、


全てに勝ち続けた一対はこう呼ばれた。


覇王。





翌年、早々に覇王はまた一つ栄誉を手にした。


そしてそれが、最後の栄誉となってしまった。


前年、常に覇王の後ろにいたモノがいた。


この度の戦いでは、覇王の前には、その後ろ姿が移っていた。



ここが切っ掛けだったのだろう。

何かが切れてしまったのだろう。

そこからは覇王討伐の時代となった。


勇者が、戦士が、新たな天才が、覇王を撫で切った。



新時代が幕を開けた。



ソレは前線を退く決意をした。




少年は言った。


「ボクはまだ戦い続ける。君も新たな戦いが始まるだろう。

 約束するよ。また君に会いに来る。


 新たな栄誉を手にしてね。」


ソレは言った。


「楽しみにしているよ。

 でもなるべく早くしてくれよ?」



少年はその後、新たな一対として戦いに臨んだ。


勝てなかった。

惜しかった。

もうちょっと・・・。

大敗だ。

怪我をした。


ただひたすらに困難に立ち向かい、茨の道を突き進んだ。


また負けた。

また敗けた。


それでも前を向いていた。

あの日、あげることのできなかった視線を、ただひたすらに前にした。



そして、やっと新たな栄誉を手に入れた。


覇王として戦い、初めて敗けたあの戦い。

あの日と同じ日付で、同じ場所で、あの時より少しだけ成長した形で、

少年は勝鬨を挙げた。



約束は果たされる。



「やっと会いにこれたよ。」




17年の時が経っていた。



少年だったモノは静かに墓前に花を添えた。




こうして、覇王と呼ばれた一対の物語は幕を閉じた。











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