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ずっと君を見ている

作者: あっちいけ



 さて、君とこうしておしゃべりするのも久しぶりだね。


 ん、そうだったかい? まあ、気にしないでおくれよ。


 ところでさ、前々から言ってることなんだけど、僕って見えるひとなんだ。


 あ、ちょっと嫌な顔したね? そうそう、でもこんな季節だから、つい話したくなっちゃったんだ。


 それも今日は君に関係ある話さ。それも、大いにね。


 あ、そこまで嫌な顔しないでおくれよ。聞いといて損はないよ? むしろ、聞かないと困ったことになるかもね。


 うん、本当に君のためになると思うんだ。いいね、君の為の話なんだから、最後までちゃんと聞くんだよ?




 そうだね。まず、君が帰る時にいつも使ってる道。


 その道を頭の中で辿ってみて? そう、その道だよ。


 それで、家に帰るためにいつも曲がる道。あるでしょ? ほら、あそこ。


 家に帰る時、いつも曲がる道。曲がるとほら、もうすぐ君の家に帰れるなぁ、ってところの道のことだよ。


 そうそう、その道。


 そこの角にさ、いるんだよ。赤い服を着た男の子が。


 うん、ずっといる。今はまだ君に見えなくても、ずっと、じーっと、君を見ている。




 君が角を曲がる度に、君のことをじーっと見上げているんだよ。


 場所は分かるかな? あの角って、ほらちょっと薄暗いというか影になってるところがあるじゃない? そこのちょっと隣。


 そこに立って、ずっと、じーっと君を見ている。ずっと前から君を見てるんだよ。


 特に夕方遅めの時間が一番濃く見えるかな。今の季節だと大体6時とか7時くらい。


 前に見たときは夕方でも薄かったんだけど、ここ最近段々と濃くなってきてるね。




 うん? 赤い服を着た男の子に心当たりがないって? そりゃそうだろうね。あの子はきっと、元々は誰でも良かったんだよ。


 でも、いつの間にか君に執着してしまったみたい。ずっと、じーっと、君を見ている。


 朝は安心していいよ。その子はそこにはいないから。


 それと夜も大丈夫。他の強いのに負けて、その子はそこに立っていられない。


 だけど夕方は、その子が立っている。君がそこを通るのを待っていて、通る度に、曲がる君をずっとじーっと見ている。




 恐いかな? だったらこれからあの道を使わないで、面倒だけど他の道から帰ってみようかなとか思ったでしょ?


 やめておいた方がいい。それだけは絶対に、しちゃいけないよ。


 あの子は君を見ている。ずっと、じーっと君を見ている。


 君があの道を通る回数を減らしてしまえば、あの子はきっと家までついてくるよ。そのくらい、あの子は君に執着している。


 家までついてきちゃったら、もうおしまい。玄関でも、廊下でも、お風呂で髪を洗っている時でも、寝ようとしている時でも、ずっと、じーっと君を見てくるよ。


 そして段々と濃くなっていく。君もあの子のことをふっと感じられるようになっていって、誰かが家の中にいる気がしてくる。


 振り返っても、まだ君はあの子のことが見えないかもしれない。でも、そこにあの子はいるんだよ。


 ずっと、じーっと君を見ている。ただ君に見えていないだけで、ずっと君を見てくるよ。





 そんなのは嫌でしょう? じゃあどうしたらいいか教えてあげる。


 挨拶すればいい。夕方だから、こんにちはかこんばんはか、どっちにしようか悩むところだけどね。


 いいかい? 挨拶をするんだ。言葉に出さなくてもいい、心の中でつぶやくだけでもいいんだ。


 今度夕方にあの道を通った時、しっかり角の方を見て、心の中でしっかりと挨拶してみるんだ。


 あの角の方を見て一言、挨拶すればいい。ほら、今頭の中で予行演習しておこうか。


 そう、家に帰るときに、いつも曲がる、あの道の角。そこに、君をじーっと見ている子がいる。


 君にはまだ見えていない。でも、そこにいる。今だけは見えている気になって、挨拶してみよう。


 いつも使う曲がり角。


 君はそこを曲がろうとしている。


 ほら、赤い服を着た男の子がそこにいるよ。


 まず目が見えてくる。


 君をじーっと見てくるよ。


 目が離せない。君は何故か目を離せなくなるよ。


 男の子がずっと、じーっと君を見てくるよ。


 挨拶してみよう。


 せーの。





 こんにちは。





 そう、それでいい。


 この話はこれでおしまい。面白かったね。



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― 新着の感想 ―
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