できることを
「ジェニファーにはマークがくっついてた」
「あのマーク・リーか?なんだよ、どうしてそれを早く言わないんだよ?」
じゃあ、はやく居場所を教えてくれよ、とジャスティンが立ち上がるが、めずらしく困ったような顔をケンがみせる。
「『くっついてた』って過去形をつかったつもりなんだけど、文法間違ってたか? マーク・リーはおとといの夕方、ジェニファーの監視中に、車にひかれそうになったばあさんを助けて打撲で三日間の療養中」
「そ、それって・・・」
まだ呪いの続きかと考えたジャスティンが身をすくめる。
ケンはつまらなさそうに付け加えた。
「配送中のトラックの運転手に怪しいところはない。『ばあさん』がいきなり走ってとびだしてきたって証言してる。防犯カメラの少ない二十番通りの古いアパートメントに挟まれた細い道だ。ちなみに、助けられた『ばあさん』はそこの住人じゃないみたいで、現在行方不明」
「なんだ?・・・もしかして、その年寄がわざと車の前に飛び出したってことなのか?」
驚くマイクの言葉にケンはにやけて肩をすくめただけだった。
「じゃあ、 ―― けっきょくそこからジェニファーの行方がわからないのか?くっついてた意味ないだろう?」
ジャスティンの言葉に、またしてもザックが立ち上がる。
「あんたが言うか?そっちだって動き出すのが遅いんじゃねえの?」かみつくような新人の肩をルイがおさえる。
「あのなあ、こっちはローランドのことがあって」ジャスティンも黙っていない。
「こっちだってほかの《掘り当て》しながらやってんだよ。だいたい、マークは人を助けてケガしたんだぜ? 意味ないとか言うな」
ケンカでもはじめそうな二人の間に二コルが太い腕を割り込ませる。
「 そこまでだ。 ―― 警察官たちが街じゅうに捜索隊を送り出して、保安官たちが森の中を徹底的に探してるんだ。無事に彼女がみつかることを祈りながら、おれたちにできることをする。 そのためにここに集まったんだろう?」