№40 ― 何もなかった
№40
「いったいどうなってんだ!?」
ガン!と椅子を蹴ったジャスティンは腰に手をあて、うろうろと歩き回っていた。
ハワード邸にいたジャスティンの携帯電話に、来られないかという連絡がジャンからはいり、城の教会で何か発見があったのかと期待して警備官の会社に駆けつけたというのに、結果が『何もなかった』という一言で、ジャスティンは腹が立っている。
警備官と警察官が張り切って捜索したノース卿の城の中はもちろん、庭、教会の中には例の『儀式』を行ったようなおかしな痕跡はどこにもなく、教会から押収したコレクションには、バーノルド事件の被害者たちの指紋はもちろん、ローランドの指紋さえ見つからなかった。
「おまえら、本当に全部すみずみまで確認したのか?」
いらだった気持ちのまま言葉をぶつければ、ジャンの冷静な声がかえる。
「確認した。石積みの壁のひとつひとつまで。 おかしな仕掛けのある建物だから、おれたちと警察官たちとで何度も確認したさ。執事に案内されて別の入り口からはいる教会の地下室もあったんだが、土もむきだしのままで大昔の耕具が置かれてた。 探知機でもおかしな埋蔵物はなし。細工は教会の入り口の扉だけだった」
「じゃあ!」
バン!と両手をテーブルについたジャスティンは、その広い会議室に座った警備官たちをにらみあげた。
「―― おまえらにきかされたあの話は、おれが思ったとおり、ぜんぶただの空想だったってことだな?」
「そんなわけねえだろ!」
ザックも負けずにテーブルに身をのりだす。