ハワード夫妻 ※※ ― これいじょう(ジェニファー)
手帳を閉じた弁護士は自分とむかいあった警察官二人を平等にみやり、口調をまた《弁護士調》に改めた。
「 ―― 携帯電話をだせというなら出しますが、わたしは容疑者からはずしていただきたいですな。 これからハワード夫妻の《弁護》をしなくてはならないので忙しい。―― ここでひとつはっきりさせておきたいのは、ジェニファーがいなくなったのは昨日ではなく、一昨日だったということです。一昨日の夜、わたしとの面会をおえたあとからジェニファーがいなくなったことを、夫妻はわたしにも黙っていた。・・・今日、朝になってもジェニファーが帰ってきていないことをうちの事務所に電話しようとしたメイドを刺したのは、・・・夫人です」
では、と弁護士はシャツの襟をなおしながら背をむけた。
マイクが何かを言おうとして代わりに大きく息をはき、驚いて声も出ないジャスティンが振り返って見ると、泣きながら身を寄せ合うハワード夫妻は、一気に老けてしまったように小さくみえた。
――― ※※ ―――
ねえ、ジェニファー、なにを泣いてるの?
「だまって!これ以上しゃべらないで!」
なにを怒ってるの?
「おこってなんかないわ!」
じゃあ、――― こわがってるの?
「っもお、だまってて!おねがい!もう、しゃべらないでっ!!これいじょう―、もお、」
――― ※※ ―――