みのがした
「やっぱり彼女、自分でいなくなったのか?」
ジャスティンの言葉に険しい目をむけた弁護士は、泣き続ける妻にそれをなだめる夫という役割をこなしているような夫婦を振り返り言った。
「 ―― わたしたちは常に、彼らに注意を促していた。 彼女はまだどこかのカルト宗教にはまったままだったし、どうやったら刑を受けなくてすむかも理解していた。いちばん危ない種類の若者だ。目を離さないよう、家族だけが彼女を救えるんだという点では、精神科医とわたしたち弁護士の意見も一致していた。なのに、 ―― かれらは彼女をみのがした」
どうやらこの弁護士は、あのかわいそうな夫婦に憤慨しているようだと思ったジャスティンは、きゅうに彼らをかばいたくなった。
「 あんただって、彼女にナイフをみせられて脅されたら、みのがしたくなったと思うけどな。あのかわいそうなメイドはきっと、みのがせなくてジェニファーと揉めたから、あんなことになったんだろ。 知ってるか?彼女いつも――、」
「スカートの中にナイフがある。わたしも初対面のときにみせられた」
どうやら刃物の存在はそれほど秘密ではなかったらしい。
「あのナイフが彼女の物であっても、彼女が刺したことにはならない。―― きみはずいぶんと予断を持った警察官のようだな」
正面から厳しい目をむけられ、弁護士の怒りが自分にむけられていることにようやくジャスティンは気づく。
しかし自分の保身を考えて連絡を遅らせたのはそっちだろうといいかえそうとしたところで、マイクが弁護士の前に立った。