引き継いだ弁護士
殺人事件の現場となってしまった家に集まったたくさんの人間をよけながら奥へと進む。
ジャスティンが訪れたことのある広い居間のソファに、身を寄せ合う夫婦と、そばに立って苛立たしげな声をあげる男が、数人の警察官に取り囲まれていた。
「わたしに携帯電話を出せとはどういうことかね?」
「 ―― あなたも現在容疑者の一人だからですよ」
落ちついてよく通るマイクの声に振り返った男は、意外に若かった。
取り囲んでいた警察官たちが後は任せたというように散っていく。
自己紹介するマイクとジャスティンを疑り深そうに見つめてくる弁護士は、不安げにみあげるジェニファーの両親に片手をあげてみせてから、ゆっくりと威厳をとりもどすように声を調整する。
「 わたしは弁護士のオットマンです。 ハワードご夫妻の顧問弁護事務所から」
「なぜ、すぐに連絡しなかった?」
「・・それは、・・もちろん、すぐに心当たりの場所をあたって」
言い訳しようとする弁護士のむなぐらをつかんだマイクが部屋の片隅へとひっぱり移動した。
「 ―― いつから彼女の担当だ?」
「―― 四日前に、精神的に参った前任者から引き継いだばかりだ。 彼女は弁護士に対してだけ、常に脅すような言葉を口にした。 明かしてもないこちらの家族構成から趣味にいたるまで、ジェニファーはどこかで情報をしいれてくる。 だが、精神科医の前では、『気が弱く主体性のない精神的に幼いままのジェニファー』を完璧に演じてる」
先ほどまでの気取ったしゃべり方をやめ、多少の怒りも混じったその言葉にマイクはむなぐらを離した。




