あだなが違った
でも安心しろ、というジャンが椅子にすわった。
「ここにいない、うちの班の人間が二人、警察官といっしょに城にむかうことになった」
だからケンがいないのか、とザックがとたんに嬉しそうな顔をあげ、自分たちもすぐに捜査ではいれるんだろう、と腕をまわした。
そう思うだろう?とジャンがほほえむが、そうはならない、とすぐそれをけす。
「 『面会』までだなんだと。警察官庁と検事局では意見がまとまらなかったわけだ」
これにザックがこどものような不満な声をあげた。
「まあ、かなりな横槍がはいったにもかかわらず、短時間でここまでたどり着けたのはさすがギャラガーってことで、少しはほめてもいいと思うけどね」とウィルが感想をのべ、二コルが、城にいく警察官はだれかとジャンにきく。
「マイクだろ。シェパードの代わりがまだ見つからないから、しばらくバーノルド事件の指揮をとることになったらしい」
この答えにザックがさらに不満げに顔をしかめた。
「大丈夫なのかよ?あの無精ひげのおっさんって見た目より歳いってないし、おまけに『子猫ちゃん』だぜ?」
ザックの言葉に他の男たちが爆笑し、ジャンがマイクの昔のあだなは『闘犬』だと教える。
「とめにはいるまで捕まえた犯人をボコボコにするってんで有名だったんだ」
「・・・ちくしょうだまされた」
笑いをおさめた二コルが身をよせて小さく言った。
「マイクはおまえの不慣れな反応がうれしいんだ。素直でいい新人だっておまえのことを心から歓迎してる」
肩をたたかれ、ザックがしぶしぶうなずいたところで、ドアがトトンと軽快な音をたて、すぐにひらかれた。
「やあ、ひさしぶり」
輪郭も鼻筋も細長い顔がだされ、箱を抱えた男が肩でドアを押しながら入ってきた。