ベインの情報
警備官に伝える情報はここまでで、ここから先はまた、カンドーラの賭博とギャングの金とクスリの流れの話しになるのだろう。
「 ―― じゃあ、ぼくたちはこの資料もらっていって、またあの《くそ寒い家》でマデリンとむきあってくるよ。 貴重な情報をありがとう」
そう言って嫌そうに立ち上がるウィルに、バートと握手しているベインがふりむいた。
「警備官の《ウィリアム・デ・サウス》といえば、女の扱いから銃器の扱いまでかなり長けているってはなしだ。 マデリンからいい話を《掘り当てて》こいよ」
むっとした表情の男が、それって誰からの情報?とききかえす。
「おれは治安部署の人間だぞ?いろんな情報を見聞きする。―― いいか、次に『資料』が必要なときは、おれに直接連絡してこい。バーノルド事件を解決するんなら、長官の個人情報だってさしだしてやる」
冗談とはおもえない声でバートに言いきった男に、それはいいよ、といやそうに首をふったウィルが、ノアを指さした。
「そんな情報より、ノアの健康診断の数値を教えてよ。 ドーナツの過剰摂取が、いかに体に悪いかを、数字でみないとわからないみたいだからさ」
髭の男が勢いよく立ち上がるのを眼の端にしてウィルはあわててドアをぬけ、残ったもう一人の警備官は、余計なお世話だと顔を赤くする警察官に目をむけ、「 あんたが長生きしてくれないとおれたちは困る 」とまじめに口にし、相手を黙らせた。
警備官たちが出て行ったあとの、笑いをこらえる警察官たちをみまわしてベインが口にした言葉に、ノアはさらに顔を赤くして、吹き出る汗をぬぐうことになった。
「 ―― なるほど。 防犯のノアは警察官だけじゃなく、警備官たちからも深く慕われる人物である。 と。 ―― おれの情報につけくわえておこう」