まるでわかっているみたいに
そこなんだ、とベインも首をかしげる。
「 まさかあの派手なラジオを買うためだけなんてありえないからな。 ―― だから、《星の恵み》になにかあるんじゃないかと思って、刑事部署に進言したが、ケイトが教会に姿を見せたのは失踪する一年以上前だったし、つながりはないだろうと片付けられた。まあたしかに、つながりは少なすぎた」とベインは両手をあげ、「ただ」と、つけたした。
「―― おれが気になったのは、『感動的な対面』で彼女が父親にいった言葉だ」
娘であるケイトは、初対面のカンドーラに、『なにもしらないっていうのは幸せね』と笑ってみせた。
父親である男は、娘のこれまでの苦しみを思って、抱き寄せようとしたのに彼女はそれを押し戻し、あなたにはこの先もなにもわからない、と馬鹿にするように笑った。
戸惑ったカンドーラが、せめてこれからマデリンときみの面倒は見るからというと、それは無理だと断られた。
「 ―― 彼女は、《母親が存在を拒否する男がどんなものか》を 《この世にいるうちに》みたかっただけだ、と言ってる。カンドーラは持病もないし自分は健康だからまだ長生きするとこたえ、さらに彼女に馬鹿にされように笑われたってことだ。 つまり、 」
と警備官たちをみた。
「 ―― 彼女は『自分』が『この世に』いるうちに、父親を見たかったってことじゃないかな? ・・・・おれは担当じゃないからなんとも言えないが、なんだかおかしな話しだろう?まるで、もうすぐ自分が『この世』からいなくなることがわかってるみたいじゃないか?」
ベインは誰かに質問したわけではないようで、しばし黙り込んだ。
だが数秒もしないうちに警備官たちに顔をむけ、お前らが聞きたそうな情報はいじょうだ、と片手をあげた。