『代価はどこに』
うなずいたベインが、ケイトの父親の名前をしってるのは教会の聖父だけだ、と机から身体をはなして椅子にもたれる。
「・・・だが、もちろん彼はカンドーラになんかケイトのことを教えちゃいないだろう。会ってみたが、もう引退間近のかなりの歳な聖父さんだったよ。だいいち自分のところの信徒を他の宗派の教会に渡すようなことしても、意味がない」
「じゃあ、いったいだれがケイトのことをカンドーラに?だいたい、―― どういうふうに『教えて』もらったんだって?」
ミルクをたっぷり含んだコーヒーを飲み干したノアがベインにたずねる。
「これだよ」と手元の資料の中からひきのばした写真がだされた。
『 困ったあなたがおさがしの それはあちらにございます
されどもそれを手にいれる 代価はどこにございます?
さあ あなたはなにをさしだされるのか? 』
「・・・これ・・」
息をのんだウィルをバートが目で黙らせる。
『女王のダンス』からの引用であることを、この席では話すなということだ。
事情を知っているノアだけが、この場をとりなすように、これがどうした?と写真を手に取った。