誰かが教えてくれた
「 ―― そこなんだよ」
ベインは組んだ腕を机に置いて身をのりだす。
「 おれたちはてっきりカンドーラがケイトをみつけだして自分のところに誘ったのかと思った。ところが、十二年前、彼女が事件にまきこまれてから、おれたちは『星の恵み』の入信のいきさつをたずねにいったんだが、やつは泣き崩れながら、『知らない人物が彼女の居場所を教えてくれた』って言ったんだ」
しらない人物?とウィルが復唱しながら顔をあげる。
「ああ。彼はずっとマデリンを探し続けてたけど、みつけられずにいた。 ―― ところがある日突然、マデリンが産んだ子どもがいると、知らないやつから教えられた」
「知らないやつからの情報を信じた?」
ウィルのいくぶんばかにした声に、ベインは真顔でうなずく。
「大事な人の行方を捜してれば、そういう情報も信じる。 ―― で、そいつが与えてくれたヒントで探し出したケイトは、若いころのマデリン・モンデルにそっくりで、すぐに彼女は自分の子どもだとわかって、『感動の対面だった』と彼は言ってたが、それはどうかな・・・」
どういう意味だとすぐにバートにきかれ、ベインはゆっくりこたえる。
「・・・カンドーラがケイトにしめされたおかしな条件があるんだ。 ―― まず、この出会いはマデリンには秘密だといわれた。だから彼はマデリンには会ってない。 ケイトと会うのも、『星の恵み』の集会のときだけ。直にケイトに話しかけちゃいけない」
警備官たちは眉をひそめた顔をみあわせた。
「 ―― だから、おれたちがマデリンに会ったとき、自分がしらないうちに、《娘と父親》が対面をとげてたことを知った彼女のとり乱しようはひどかった・・・。けっきょく彼女はずっと、父親の名は忘れた、あの子に父親はいないって言い張るから、『確認』はとれなかった。 でも見ればすぐにわかるさ。ケイトの眉をひそめたような笑い顔。カンドーラにそっくりだ。 ―― でも、マデリンはきっとケイトに『あんたに父親はいない』って、言ってたんだろうな」
それが親子の不仲の原因でしょ、というウィルの言葉がはさまる。