大事な情報
ちょっとまってよ、とウィルが手をあげる。
「これってさ、ケイトの母親の、マデリン・モンデルの間違いでしょう?」
「それは、マデリン・モンデルに確認してあるってことなのか?」
ベインに聞き返されたウィルは戸惑う。
「確認はとっていないよ。・・・でも、あの暮らしと彼女の主張。それに、『星の輝き』のマークが入ったラジオもあったから」
色のない質素な生活に、一つだけあったきれいなラジオ。
ベインは少し笑うように別の資料を整えてウィルに差し出す。
「ケイト・モンデルは十三年前に、『星の恵み』に入信してる。その名簿は十二年前のバーノルド事件のときに、おれたちがさがしだしたものだ。べつに頼まれてやったわけじゃないが見つけたこの情報は、当時の刑事部署に報告はした。 ―― だが、何の返信も無かったので、そのまま倉庫にしまうことになった」
「きっと、シェパードが無視したんだろう」とノアが眉をしかめた。
「だろうな。彼は専門学生だったころから仲間内でも『嫌な奴』で有名だったから、『無視』されても驚きもしなかったが、今回やつが捕まったのを知って、これはきっとあのときも、やつの性格の悪さだけで無視したわけじゃない、と思ったんだ」
「こんな大事な情報を握り潰しても、警察では何の問題にもならなかったって?」
ウィルのいらついた声にバートが落ち着いた声で応じる。
「まだ、ギャラガーが長官になる前のはなしだ。それに、おまえだってケイトの母親に誰が信徒なのか確認しなかっただろう?」
「そりゃまあ、・・・そうだけど」
ノアがウィルにコーヒーのカップを差し出す。
「まだ間に合うだろう。おれたち警察官は、お前たち警備官がなにか重要な《掘り当て》をしてくると、いつも『ちくしょう』と思う。だけど、反面いつも期待してるんだ。今回も待ってるぞ」
めずらしく照れたように片眉をあげたウィルが「このほめ上手をうちの班長にも見習ってほしいよ」と、ベインに会議の先をうながした。