あのラジオ
「やつが教祖になっている『星の恵み』は新興宗教だが、聖堂教の新派の一つだと名乗っている」
一枚目の紙には、つい最近、違法賭博場の罪で捕まった男の経歴がのっていた。
「 信徒たちには、清貧をもとめるくせに、聖父であるこのフランク・カンドーラは贅沢な暮らしをしてた。もちろん、ギャングがらみの賭博場で稼いだ金もあったんだろうけど、最初の資金は信徒たちから集めた金だけだろうな。―― さて、おまえたち、この宗派に心当たりは?」
バートとウィルは顔をみあわせたが、黙っていた。
自分たちの『心当たり』は、ケイト・モンデルの家に『星の恵み』の印のついたラジオがあったということだけだ。
それをみこしたようにベインがわらう。
「ちょっとだけ心当たりがあるって顔だな。 商品を見たのか?この『星の恵み』は信徒の生活を切り詰めさせるくせに、自分のところで作ったオリジナルグッズを買わせるんだ。『星の輝き』のマークがついた、電池式のラジオとか、派手な時計とか、皿とかな」
「あの家、暖房もなくて、ひどく寒かったよ」
みんなで震えて帰ってきたんだというウィルに警察官たちは笑う。
「そう。普通の感覚なら寒いもんは寒い。だが、カンドーラの主張によれば、自分の声がラジオで届けば、その部屋の温度は一気に五度ほどあがるんだと」
「そのラジオ、熱風でも出るのか?」
バートの真剣な問いにさらに笑いがもれる。