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たくさんの眼



 「 ―― こんなふうに『事実』がはっきりしたところで、少しは先に進めるかしら?」


 存在をすっかり忘れていた女の声で、二人はすぐそこに仕事に関係のない人間がいることを思い出した。




 女をにらむマイクのむかい側でジャスティンがゆっくりと息をはきだしながら、自分の頭のうしろをたたく。


「聞きたくない事実だったよ。どういうことだ?ローランドが落としたノートは、ノース卿に拾われてないだって?」


 赤い口の女がこちらを見ているのにもかまわず、マイクも唸ってしまった。


「・・ってことは、ノース卿は《ノートを拾った》っていう嘘をついてまで、ローランドを自分のところに雇い入れたかったってことか?・・・やっぱり、ノース卿はローランドがどんな男か、前から知っていたんだ。雇い入れたとしても、その暮らしぶりやなにかを話せるような友達がいないってことを」


 眉をおかしなぐあいに寄せたジャスティンは、信じられないというようにマイクをみた。


「どういうことだよ?じゃあなにか?ノース卿はそういうやつをずっと探していたとでも?何のために?わざわざ雇い入れる意味があんのか?それに、もしそういうのを探していたとしても、いったいどうやって条件ぴったりのあのローランドを探し出したっていうんだよ?しかも、やつがノートをなくしたってどうやって知ったんだ?」



 興奮したジャスティンの鼻に、また独特の香りがとどき、それに言葉がのった。


     

         「きっと、たくさんの『眼』があるのね」



 耳元でささやかれたような女の言葉に寒気がはしったジャスティンは体をふるわせ、こわばった顔のマイクが小声で問い返す様子を見ていた。


「・・・たくさんの『なに』だって?」



 むこうのテーブルに座る女は、白い顔の切込みのような唇に、笑みをのせ言い切った。


「きっとその方、自分の代わりに動いてくれる たくさんの『眼』 があるのよ」





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