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煙は災い除け


それは、ローランドとノース卿の両方が演劇関係者に語っている出会いのきっかけだ。


「ローランドはノートをなくして、ノース卿がそれを拾って、その文章が気に入った。もし、ノース卿が前からローランドを知っていたなら、そんなまわりくどい《出会い》しなくてもいいんじゃないか?」


「《出会い》は《偶然》か・・・ぐうぜんのであい は・・・」


 マイクの頭の中に何かがひっかかりそうになったときに、かわりに喉がひっかかり、むせこんだ。


 おい平気か?と半笑いのジャスティンの鼻を、独特の香りが刺激する。



 このにおい!



 振り返った後ろななめの席に、おととい会ったばかりの女がすわっていた。


 思わず悲鳴をあげそうなのを飲み込む。



「ごめんなさい。煙がかかってしまったかしら?でも、この煙草の煙、災い除けにもなりますのよ」

 ワクナは赤い大きな口から、ふうっと白いもやを吐きだした。



「あ、あ、あんた、あの、・・・灰皿・・」


 ジャスティンのかすれた声に微笑んだ女は、細長い指にはさんだ煙草を振って、灰皿がなにか?使った灰皿は新しいのに取りかえて帰りましたわ、とすこし首をかたむけた。

「それが、なにか?」


 いえ、とまだ咳をしていたマイクと目線を交わしたジャスティンが、テーブルにすこし出ていた資料をかき集めてしまい、尻の下に敷く。



「突然あんなことを言ったので、怒っていらっしゃるのでしょう?」


 カップにのばした細い右腕にはじゃらじゃらと音を立てる腕輪の束がゆれる。

 格好は先日と同じだが、女の腰の横に使い込まれた小さなバッグがあるのを目にして、ジャスティンはとたんに、女が幻ではない実体なのだと感じる。



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