才能を発掘
「 おれは、おまえほど呪いを信じちゃいないが、それでもあの現象はおかしい」
マイクはうなるように低い声で言う。
ジャスティンは留置所でみせてもらった映像を思い出す。
それはドーンズのカメラと同じように、画面がゆがんだあとにとつぜん切れ、また突然なおるというもので、カメラおよび他の電気機器に異常は認められなかったという点も一緒だ。
「・・・おれが呪いを信じるもう一つの理由をあんたに言っとく。 思うに、停電の仕掛けを考えるより、呪いの仕業だって片付ける方が早い」
ジャスティンの正直な言葉にマイクは嫌な顔をした。
ローランドが通っていた演劇学校は、いくつも同じような学校を抱えたこの州内では、新しいほうだが、ここ数年でかなり舞台俳優をだしている。
受付で名前を言うと、すぐに奥の部屋へと通され、しばらくすると、重そうな紙の束を抱えた男が来て、学生課の名簿だといって抱えた束をテーブルへと置いた。
「 あのピーター・ローランド?うちの学校にいたなんて、連絡があるまでまったく知らなかったけどなあ・・・」
事務局の責任者だと言う男は紙束を慣れた手つきでめくっていった。
警察官二人は顔を見合わせて驚いた。
「演劇界の常識ではなかったわけ?」
ジャスティンの質問に手をとめた男が少し考え、まったくね、とうなずく。
「ローランドの経歴ののったパンフレット、見たことない? それこそ、《月三部作》には、どでかい顔写真といっしょにはりついてるけど、生まれた場所ものってなくて、世界各国を旅して独学でかいた芝居の脚本がこの州で、たまたま中央劇場の関係者の目にとまって、その才能は発掘された、なーんてあるよ。まあ、ほぼ嘘だと思うけどね」
「あなた、ローランドのこと、好きじゃないみたいですね」
マイクの控えめな表現に、相手は大嫌いだねとこたえる。
「パーティーで何度か会ったけど、ありゃひどい。『月三部作』だって、本当はノース卿が書いたってみんなが知ってるのに、自分が書いたって言いふらしてた。人前に出るのが嫌なノース卿の代わりにされてるだけなのにね。そんなことにも気づけない鈍感なやつが、作者だなんて言ったら作品の質が下がるだけなのにさ。ノース卿がさ、変人だって言っても、あれだけのものをつくりあげたんだから、堂々と出てくりゃいいのさ。まったく、貴族様の考えることは意味がわからん」
あの若返った外見で、大衆の前には出られないだろうとマイクは城の主を思い出す。