おもちかえり
「 こちらの『見学』が終えられたら、地下もご案内するようにと主人に申しつけられております。それでは後程」
そう言って音もさせずに去った扉の方をみんながまだ見ているとき、ジャンの不機嫌な声が言った。
「・・・きいたか? 『見学』だって? おれたちを観光客だと思ってんのか?」
なだめるようにルイが肩をたたき、手袋をはめながら言った。
「いいじゃないか。『見学』だと思ってるなら、あとでびっくりするさ。おれたちがここの物を持ち帰る許可を得てるって知らないんだ。さあ、すべて回収しようか」
警備官たちが何の躊躇もなく石の壁とコレクションを置いている棚に足をかけて上にのぼりはじめるのをみて、警察官たちはとまどった。
新人の警察官の横に立ったザックが親切に教える。
「ロッククライミングって、やったことある?こうやって、ちょっとの出っ張りを利用して、のぼっていくんだけど、 ―― あんた、下で受けとめる役にするか?」
言って身軽にのぼった棚からザックが落とした石像を、二コルが軽く受け止めてビニール袋にしまうのを、警察官の新人は口を開けたままながめていた。