買い取って
ひきつった顔のジャンがたずねると、血でございます、と簡潔に答え、頼みもしないのに説明した。
「 主人が世界旅行で集めました、古い宗教でつかわれた神仏の彫り物や、面などをここには祀ってございます。 あの『鳩の血』は、鉱石の価値でいえば安物の半貴石でございますが、現地ではその昔、祭事にはかかせない、神に捧げる宝でございました。実際に何百、何千の鳩の血を集めるよりも、あそこまで大きく美しい塊を『血』として神に捧げる方が理にかなっていると主人も申しております」
「ふーん・・・たしかに、ここから見上げてもあんなにでかいんだから」かなりの大きさだろうな、とニコルが上をむく。
「あの石と、太陽を交換しようとした男が欲深さの罰で亡くなり、そのあと同族の人間もみな死んでしまったという言い伝えが残りました。 それ以来恐れて誰も近寄らなくなった石を、主人が持ち帰りまして、この教会の最高位置にすえた次第でございます」
そういうのって、勝手に持ち帰っていいのか?と小声でザックがルイに聞く。
執事の濁った眼がむけられ、許可はすべて得ております、と言う。
「説明がたりなかったようで。主人はすべての物に、それなりの代価を払い、持ち帰ったのは許可を得て買い取ったものばかりでございます」
買い取りの証明書もございます、と付け足して執事はお辞儀をし、帰ろうとする。あわててザックが呼び戻す。
「ちょっと、あんたさ、聞きたいんだけど、この教会って他にも部屋があんの?」
新人の予想外の言動にジャンがあわてて言葉をはさもうとしたとき、執事が先にこたえた。
「ございます」
「え?ほんと?」
自分で聞いておいて驚いているザックよりも、まわりにいる男たちの方が驚いた。