見下ろされ にらみ返す
外観が円錐形のこの建物は、改造前は、その円錐の中心部に螺旋階段があったのだろう。
今はその階段はなく、ただ上へととじてゆく空間の壁に、うっすら光をともすランプといっしょにおかしなものがはりつき、ザックをみおろしていた。
あのヤニコフのところで目にした《呪いをかける人形》とそっくりな木彫りの人形たちが、朽ちる寸前の木材のように置かれている。
大小さまざまなそれらが特徴的な大きな『目』で、こちらを見下ろすので、ザックは睨み返した。
「あれ、石かな?」
いちばん高い場所となる、闇の奥の方、ルイがむけた明かりをはねかえしたそれは、金網にいれて上から縄でつるされている。表面もなめらかなつやのある黒い石のようだった。
全員がそれに目をこらしたとき。
「あちらは『鳩の血』でございます」
いきなり背後からした声にザックがとびあがる。
小さな燭台を枯れ枝のような指で持って立っていたのは気味の悪い男だった。
ノース卿の執事だと名乗った男は片手にあった古いランプの中に蝋燭を移すと、「警察の方たちが教会の『保管室』の入り方がわからくてお困りだろうと主人が心配しておりましたが、いらぬ心配でございましたな」
よろしければお使いくださいとランプをザックにわたした。
「あのー、鳩のなんですって?」