またパズル?
扉は、重くきしむ音をだしながら真ん中から割れ、自動的に内側へと動きだした。
ぎちぎちとたてる音は、機械的な仕掛けのようだ。
現れた空間を目の前にして新人の警察官が「まっくらだ」と見たままをいう。
真っ先に進んだジャンがむけたあかりに、普通の教会のように整然と並んだ長椅子が浮かぶ。
そのまままっすぐ祭壇のあるだろう方へとむかい、「あった」という声で部屋に明かりが満ちた。
長椅子の列が十ほど。奥の祭壇は普通の聖堂教とかわらないつくりだった。
『神』の象徴である光と雲の中から人々を見下ろす眼をあらわした金色の彫像があり、5人の神の遣い人のうち『光の子』と呼ばれる美しい遣い人が蝋燭を支えるものもあった。
手前にはたくさんの生花が、水のはった杯の中に供えられている。
なんだ、と気の抜けた声を出したのはザックだった。
「中は普通じゃん」
「『普通』とまではいかないだろ。なにしろ窓がひとつもない」
二コルが見上げた天井には太い木材がわたされて電灯が下がっている。
やけに低いな、という警察官にうなずいたジャンが、上を指さす。
「ウィルの親父さんの話しじゃ、この教会はむかし、巨大な螺旋階段が真ん中につくられたノース卿のコレクション置き場だった。それを改造してこの『祈りの場所』をつくってるが、建物の大きさ自体はかわってない。ってことは、この上にはまだ部屋がある」
ザックが部屋をみまわし、でも階段なんてないよ、と指摘する。
警察官が「また秘密のパズルか」というのにみんなあきらめたように笑う。
「上への階段も重要だが、下への通路もあるかもしれない。パズルを見落とすなよ」
ジャンの指示にみんな真剣な表情にもどりさがしはじめた。