安全地帯
「きみの友人の『教会の彼ら』は、非常に協力的にしてくれているそうだ。 そして、その中の一人が、ある警察官の『えらい男』が、保安官の詰所に仕掛ける『盗聴器』を手配してくれた。と、言っているらしい」
ウィルが口笛を吹き「『安物の盗聴器』をねえ」と驚いた真似で笑い、ブルーナが、なるほどなあ、とうなずいた。
「シェパード。 わたしはきみのことを信じたいのだが、なにしろ実名もあがり、きみが何度城を訪れたかなどの記録もあるとむこうはいうんだ」
「そ、っそ、それはっ、」
「もちろんわれわれは君を監査審議にかける前に、通常の被疑者と同じよう扱うから安心したまえ。きみの言い分も聞き、捜査もしよう。きみも弁護士も雇ったほうがいいな。―― だが、」
そこで、声をひくめた。
「サラの指紋がついたものを持っていたノース卿は、別だ。 ―― 知ってるだろうが、彼はバーノルドの事件がおこるたび、被害者とはまったく面識がないし、見かけたこともないと繰り返してきた。わたしの前任の長官時代から、彼だけは、《始めから》事件には無関係だと決められた位置におかれていた。 ―― その安全地帯もこれで終わりだ 」
きいたこともない声で言い切ったギャラガーの顔を、シェパードは初めてみるこわいもののように見上げていた。