ドアのあけかた
光をあてられた平らな壁には、全面にレリーフが施され、それは壁と言うよりも、そこに芸術作品を持ってきたようだった。
悪趣味な芸術品を。
「・・・たしかにここは、普通の教会とは違うな」
ジャンが一歩はなれて全体を眺める。
ザックはおそるおそるその彫刻を触ってみた。
てっきり石膏のような手触りがするかとおもったそれは、冷たくすべるような感触の、乳白色の石だった。
「あの獣と人間がまじったようなのは、悪鬼だろう?あそこで裸で踊りまわってるのは、きっと魔女だな。あのへんの怪物みたいなのはみんな魔女の手下だろ」
一人の警官が説明するようにライトで示してゆく。
そういえば教会で聞いたことあるな、とみんなも口々に彫刻の感想をのべる。
「で、あの、いちばんうえで偉そうに椅子に座ってるのはだれだ?」
壁の一番上の彫刻を照らしたニコルがルイにきくが、よく見えないとかえされる。
「なあ、それよりさあ・・」
ザックが自分の正面のレリーフを眺めながら迷ったような声をだす。
「教会の入り口ってどこだよ?これって、壁だろ?」
みなは目の前のおおきな芸術品をあらためてながめた。
「いや、さっき入ってきた扉だけが教会のいり口だってノース卿の執事にマイクが確認してる。だから、―― この壁のむこうに教会の部屋があるはずなんだけどなあ」
ジャンがさがってその立派な装飾をながめるが、どこにも《取っ手》となりそうな部分はない。
黙ったまま進み出た二コルが肩でためしに壁を押してみるのに、数人の警察官もならうが、なにもおこらない。
腕をくんだザックが大声で「ドアよひらけ!」と命じたとき、がちゃりと何かが外れる音がした。
「うっそ!?」
「残念だけど、ザックの魔法じゃないよ」
秘密の部屋の鍵といえばこっちさ、とルイがしめしたのは、レリーフをふちどる枠のように、出っ張った三角形と引っ込んだ三角形が並べられた場所だった。
なるほどパズルか、とジャンが感心する。