暗闇にうかぶ
ジャンも石積みの塔をみあげ、それじゃあいくかと歩き出すしたとき、警察官の若者が不安そうに、銃器はどういう状態にしておくかと確認する。
クラークからの指示はと聞くと、必要なときに使えというものだったという。
「それなら、何かあったときは、きみにまかせる」
ジャンの言葉にはりきった返事をした警察官の肩を、ザックがたたいた。
「あのさあ、教会の中は暗いから、目が慣れるまで銃には触らない方がいいぜ」
すかさずルイが続けた。
「新人からの貴重な進言だ」
はりきった警察官が、なんだお前も新人かよ、とザックの肩を叩きかえすのをみんなで笑い、城の北側、西よりの中庭におさまるようにつくられた塔へむかう。
城はアルファベットのEを倒してむかいあわせたようなかたちで建てられ、中庭は東西に分かれている。西がわの中庭につくられたその『教会』は、城の北側となる建物につけたされたようにあり、蔦にからめとられた石垣も、よく見るとそこから新しい。
蔦がそこだけ這うことをさけた木のドアがあり、ジャンを先頭にくぐった。
ひんやりと暗い中、細くせまい石のらせん階段をのぼってゆくと、広い空間にたどりつくが、窓はなく、みんなであてたライトによって、そこがそれほど広くはない半円状の部屋だとわかる。
カーブした壁には、顔の高さにつくられた窪みに蝋燭がある。
反対側は、直線の壁だったが、そこにうかんだものを目にしたみんなの気持ちを代表するように、ニコルが唸った。
「すごいな・・」
「すごいけど、このうえなく悪趣味だよ」
ルイの評価に皆が無言で同意する。