№36 ― 城の捜索
№36
空はどんよりとして、湿った空気が今にも水滴となってふりはじめそうだった。
「昨日の捜索では信徒たちが暮らす小屋の中、畑と中庭もかなり調べた。もちろん、地中探知機もつかったが、あれらの周りには何の隠し部屋も地下空間もみつからなかった」
ノース卿からおりた城内の捜索の指揮をとることになった、マイクの上司であるイアン・クラークの言葉に警備官たちはだまって次の言葉を待った。
今朝から始まった大々的な捜索に参加する警察官と警備官たちは、不機嫌に現れた彼に、ローランドが急死したことを知らされた。
それとともに、なんとマイクとジャスティンがセットで長官にひきぬかれたということも。
「・・・ちなみに、ローランドは拘置所の独房で、脳梗塞で死んだんだ。どこかの警備官みたいに呪ってほしくて外をうろついてたわけじゃない。いいか、おれたちの縄張りに誰かが入り込んで呪いの《仕掛け》をするなんて絶対に無理だ。だから、おれは、ローランドの死因は、そのまま病死だと思ってる」
断言した男に、機嫌が悪いな、とジャンが眉をあげる。
「『機嫌が悪い』? ああそうだ。バーノルドの指揮をまかせたはずのマイクはいきなり長官に持ってかれるし、お前らの責任者はおれにこの場を押し付けてどこかに消えるしで、機嫌いいはずないだろう? ―― おれは今日、休暇のはずだった」
「お気の毒さま。でも、バートはウィルといっしょに来るよう、ノアに呼び出されたんだよ」
ルイの言葉に、クラークは眉をよせる。
「ノアに?まだそっちの方が片付いてなかったのか?」
まあしかたない、と気をとりなおしたように段取りを説明しはじめた。
「今回の捜索では、長いこと『立ち入り禁止』だった教会と、城の中も了承を得ている。いいか?ぜったいに何も見落とすなよ。警察官、警備官それぞれ二名の四人でグループをつくって分担する。 ケン、お前は一度ここにきてるんだから、城の中の案内だ。こっちにこい。教会の方は二つのグループで、ジャンのほうに」
警備官とも付き合いの長いクラークはあっさりと人員をわけて動きだす。