いい弁護士を雇えと伝えろ
問われたレオンが、何を言えばこの相手に通じるのか、考えるのもめんどうになっていたところで、吹き出すようにウィルが言った。
「話になんないよ」
ウィルを見てからシェパードは続けた。
「そうだ。話にならない。おまえたちは何の反省もしていない。まったく困った部下ですな。ブルーナ統括官、どうしますかな? ノース卿は今回のことを、かなり気にしていらっしゃる。必要ならば、法に訴えても今後のことを考えたいとおっしゃっている。 ―― まあ、弁護士を挟むといろいろと細かいことにうるさくなるし、こちらの評判にも傷がつく。 ここはひとつ、わたしがノース卿に、」
がちゃりとノックもなくドアがあき、ひとわたり目をはしらせた男が早口に発した。
「いい弁護士を雇うように伝えたまえ」
「――― は?」
「いい弁護士を雇えと、伝えるといい」
いつもとかわりなく静かな動きで部屋へと入り込むと、ダン・ギャラガー長官は、口をあけて己を見上げるシェパードに穏やかな声で続けた。
「ローランドが、 ノース卿のところから盗みだしたもの を、彼の隠し金庫から発見した」
「・・・それは、つまり、・・・ローランドに弁護士をつけろという意味ですか?」
間の抜けた問いを発したシェパードに顔を近づけ、ギャラガーは微笑んだ。
「最後までききたまえ。 ―― その、盗み出したものから、バーノルド事件の被害者である、サラ・クロフォードの指紋がでた」
「サラ?・・・」