『仕返し』と『呪い』
マイクはひどく間の抜けた顔でこちらをながめ、「しかえしか」と小さくつぶやいた。
「―― そうか。『呪い』ってのは、ようは『仕返し』なんだな」
「はあ?」
眉をよせたジャスティンに届けられた新しいグラスを渡し、マイクはにやりとした。
「おまえ、ガキのころお化けこわくなかったか?」
「おばけぇ?」
その反応に苦笑したマイクが告白するように声をおとした。
「おれはむかし、お化けが大嫌いだった。一緒にくらしてたばあさんがそういう話しの得意な人間で、どんだけ泣かされたことか。で、そこで学んだことがある」
いいか?と指をジャスティンにつきつけた。
「 ―― お化けってのは不思議な力でいろんなことをする。その中には『呪い』をかけるっていう部門がある。だが、―― やつらが呪いをかけるのは、先になにかをされたからだ。 開けてはならないものを開けた。触ってはいけないものを触った。そういう『約束』をやぶるから、やつらは『呪い』をかけてくる。 ―― つまり『仕返し』だ」
目のあったジャスティンはいちおううなずく。
ここまでの話は理解しているという証拠に。
「 で、呪いをかけられたほうってのは、とにかくおびえるしかない。いつどこでどんなことをされるかわからないからだ。 ―― ケンたちが受けた『呪い』がまさにそうだ。 あれは、『呪いを信じようとしない』ことに対する『仕返し』だ。 あのケンでさえ、嫌なめにあった」
ジャスティンはまたうなずく。
「 で、ここに、『呪い』にひどくおびえた男がいる。そいつはある人物のところから大事なものを盗み出し、その人物がやばいことをしてるっていうのを警察官に『ちくった』」
マイクが普段つかわない言葉を口にするのに笑いをかみころし、うなずく。
「 つまり、ローランドは、ノース卿の『教会』にいるやつらが、そういう『作業』をするやつらだっていうのを知っているんだ。だから怒ったノース卿がそいつらに『呪い』っていう名前の『仕返し』をさせると信じてる。 つまり、ノース卿はあの教会のあやしい人間たちが何をしているか知ってる上で、彼らを囲ってるんだ。 いや、知ってるからこそ彼らを囲っているんだろ」
「・・・なるほど。じゃあ、ローランドをもう少しつつけば、ジェニファーの仲間の『事故』についてしゃべるかもな」
「ああ。 そのかわり、絶対に『呪い』から守ってやるって約束してやらないとな」
こんどこそ二人そろってローランドの気の小ささを笑ったところに、鼻をついた独特の香りとともに耳元で声。
「ちがうわ」