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呪われて殺される

 

 ひと睨みしてグラスを置いたジャスティンが、でもなあ、と天井をあおぎつぶやく。


「自分の書いた芝居があたって、ほんとうなら成功者になってたのに、なんでバカなこと続けてたんだろうな。そんなにノース卿にまた会いたいなら、自分から城に行けばよかったのに」



「そうだな。なにか屈折した感情かもな。いまじゃノース卿の名前をだすと、ひどくわめきだして、拘置所での様子もおかしい」


 なんだよそりゃ、と笑ったジャスティンはグラスにつけようとした口をはなし、わかったぞ、と指をならした。


「 もしかして、実はあの変わり者の『貴族様』は、怒ると暴力的で手が付けられないタイプなのかもな。それを身をもって知ってるローランドは、自分のせいで怒ってるノース卿に『仕返し』される、っておびえてるんじゃないのか?」

 笑ってグラスを飲み干す。

 


 マイクは腕を組み考えた。


「『仕返し』か・・・。おれの印象だと、ノース卿はそういうタイプにはみえないがな。それに、ローランドはすこし病気かもしれない。誰もいない独房でずっと誰かとしゃべってるっていて監視官や弁護士にも、自分はこのままじゃ『呪われて殺される』って訴え続けてる」



 ジャスティンは空になったグラスといっしょに首をふり、評論家のように自信ありげにいう。


「『呪い』は関係ないね。かけるには、相手の髪とか爪とかを変な人形につめてやるんだぜ?そんなもん、あのパーティーからは押収されてないだろ?だいたいローランドのは、クスリの中毒症状だろ?」


「いや、ノアのはなしだと、ローランドからは薬の陽性反応は出てない。おもしろいことに、パーティーの主催者自身はクスリをとってなかったってわけだ」


「じゃあ弁護士の入れ知恵じゃないのか?それで精神疾患を訴えて勝とうっていう」


 独房でそんなふうに騒げば検査のため病院送りだろう、と空のグラスを店員にかかげてみせた。


 ところが、とマイクが面白そうに自分のグラスを両手でかこう。


「―― 当の本人が、独房から出るのを嫌がってる。ノアが言うにはギャングの残党の報復をこわがってるんじゃないかってことだ」


「ああ、それじゃあノース卿とギャング、両方からの『仕返し』を恐がってるってわけだ。留置所の独房が一番安全だ」


 いい隠れ場所だな、と笑ったのはジャスティンだけだった。




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