その『名簿』は
名簿?テーブルに新しく届いたグラスに口をつけようとしていたジャスティンの動きがとまった。
「やつが譜面といっしょにぬすんで、それをつかってパーティーに誘ったって言ってる。結局その『名簿』はローランドが燃やしたんで確認はとれないが、事実だろう。 ノース卿はなぜかその『名簿』を知らないと嘘を言ってる。譜面のほうにはもう興味がないみたいで、いらないって・・・」
―― 違う。
たしか、『 役目は終わった 』と言ったのだ。
その意味を考えようとしたが、ジャスティンがきゅうに身を丸めるようにしてテーブルに顔をのせたので、できなくなった。
「どうした?気分が悪いならトイレに走れ」
マイクの命令に片手をあげたたジャスティンは、つっぷしたまま突然「うそだろ!」と叫んだ。
そばに立った店員が驚いてグラスをこぼしそうになり、ジャスティンをにらんでからマイクにそれを渡す。代わりに謝って、うつむいたままの男の背をたたく。
「次に叫んだら、追い出されるからな」
「その名簿って、ノース卿の教会の名簿ってことだよな?」
「教会?いや、・・・そうじゃないと思うが」
「じつは、ローランドのパーティーに出てた上流階級のやつらが、なんであんなに出席率がよくて、口も堅いのかっていうので、ジャンたちがとんでもない理由を考えててこのまえ聞かされたんだけどさ、・・・」
「へえ。そりゃおれもぜひ聞きたい」
興味がありそうな反応をしめされ、顔をしかめたジャスティンは、しかたなく、スコットが《どこからか》仕入れてきた名簿のことを話し出す。
「 ―― それで、おいだされたローランドが『外』でノース卿のパーティーをまねたわけか。・・・なるほど。そりゃ、ありえそうだ。あのローランドがあんな大勢の上流階級を集められたのも、『ノース卿のパーティー名簿をつかいました』ってきけば、納得もできる」
それで、ノース卿は名簿を『知らない』ふりをしたのか?