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今はただの想像

「バカ言うな。おれは誰かさんと違って優等生だぞ。まあ、話がはやくてよかったけどな」  

 城へは警備官といっしょにいくつもりだったので、どうやって上をいいくるめようか考えていたところだった。

「おまえもレオンの事件で動くなら、シェパード派もおとなしくなった、いまのうちだぞ」監査機構が動くという話しもある。

 




 ジャスティンは二杯目のグラスにようやく口をつけ、あいまいにうなずいた。


 ジェニファーと会うためにフックに提出した書類については、どうやらマイクは知らないようだ。

 あのとき少しばかり《頼もしい》と思ってしまった自分の上司は本当に書類を提出しに行ったのだろうか?しびれを切らせ何度か催促したのだが、「待っていろ」としか言われない。


 やはり、書類は、にぎりつぶされたのかもしれない・・・。



 そんなことを考えながら残った氷を口にいれようとしたとき、マイクが続けた言葉が耳にはいり、おかしなぐあいで氷を飲み込んでしまった。


「 ・・・なんだって?」


 相手は空になったこちらのグラスをみつめたまま、ひどく冷静に同じ言葉をくりかえした。


「―― だから、ジョニーの見解だ。サラのうたっていた『生贄のためのうた』っていうのは、きっとノース卿のところで行われた『儀式』で『生贄』になった、『人間』のためのもので、その人間がバーノルド事件の『被害者』たちだっていうものだ。 だから、捜査もその線ですすめるつもりだ」


 咳がでそうなのを無理やりおさめてジャスティンは相手の顔をじっとみつめた。


「―― マイク、おまえ、平気か?言ってることわかってるのか?そりゃあれだろ?確証はなくて、想像だけってことだろ?」

 そう。この前さんざん警備官たちにきかされたものだ。


「まあ、たしかに今のところただの想像にすぎない」


「『今のところ』?まさか!―― いいか?たしかにあの譜面にはサラの指紋があったし、録音した歌もあったってきいた。彼女にはそういう趣味があって、ノース卿の教会でおかしな集会があったのかもしれないが、でも、―― それと、バーノルドの事件は別だろう?ローランドとジェニファーはたしかに同じ『儀式』かもしれないけど、それだって生贄なんて小動物だ。おれは骨をみた。なんで『バーノルドの被害者』が『いけにえ』になるんだよ?」


 いったいジョニーもどうしたんだ?と空のグラスを音をたててテーブルに置く。




 あいかわらず冷静な声の男は店員にジャスティンの酒を頼んでから続けた。


「まあ、確かにこの見解は、『ゆきすぎてて』、ついていけないって気持ちもあるが、ともかく、サラとノース卿がつながったのは事実だし、ケイトの描いた絵が、あの城からのものだっていうのも、この目で確認してきた。・・・おれだって今日、ノース卿本人に会うまでジョニーの見解は信じていなかったさ」



 だが、あの気味の悪いほど若い老人は


     ―― なぜか《嘘》をついた。

 




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