よく思い出して
「 ―― ノース卿、わたしたちも、二人の接点を限りなく探ってみたんですよ。ところが、二人に接点はまるでみあたらない。 出身地、ここに来てからの生活、行動範囲に連絡の痕跡。まるで何もみあたらない。―― この譜面と、ローランドと彼女をつなぐのは、この場所しかないということです。 しかも、サラはいなくなる直前に、この森の中で『うた』を練習しているのを目撃されている。・・・彼女は、この森で発見されたかわいそうな女性たちに、・・・なにかを思うところがあったようで・・・ここに足を運んだのは、きっと一度や二度ではないでしょう」
「ほお、ほんとうですか?だが、見たこともないですな」
返事は断定的で、自信に満ちている。
「・・・彼女がこれに触れたのは、今から六年以上前ということになります。ローランドと一緒にいたのかも、しれませんが。忘れているということはありませんか?」
よく思い出して下さい、という含みをもたせて問えば、ありませんな、とほほえむように返される。
「―― まったく知らない女性だ。あのかわいそうな事件の被害者たちがこの森でそのからだを発見されたことは、ほんとうに残念で悲しいが、わたくしにはまったくかかわりのないことだし、こたえようのないことだ。 このコレクションに、なぜ彼女の指紋がついていたのかは本当にわからない。ローランドがわたくしの知らぬ間に、その女性を招き入れたのだろう」
困ったことだというように首をふり、男は笑った。
マイクはむかつくのをおさえるようにさらに聞く。
「・・・ちなみに、あの譜面は、何の《うた》なのですか?」
『何のうた』なのかは、本当はだいたいのところはわかっている。ただ、マイクはその報告をあまり信じてはいないし、他の見解もあるだろうと思っている。
こんなことをジョニーに言ったら、次からは科学捜査部から報告はもらえなくなるだろうけど。